第6話

「えと、ごめんなさい……」

 とりあえず謝った。

「こんなつもりじゃなかったの。ただ一言謝りたかっただけで」

「ただのトカゲにですか?」

「う……」

「それがあなた方の世界での常識なのですか?」

「うぅ……」

「はっきり言って迷惑です。自業自得と言われても仕方ありません」

「そ、そこまで言われるほど?」

「言われるほどです」

「……ごめんなさい」

 謝った。本日二度目。

 すると尻尾の切れたトカゲ人間が、大きく嘆息した。

「まあ、今更どうしようもありません。国王に釈明しようにも、自分のような下っ端の言葉は聞き入れてくださらないでしょう」

「私、どうなっちゃうの?」

「殺されますね」

「こ、殺される?」

「はい、明日にはギロチン送りです」

「明日!? ギロチン!?」

「落ち着いてください。そうならないために自分が来たのです」

 膝を着くわたしに、尻尾の切れたトカゲ人間が汚れた布を指差す。

「そこの大きな布の下には穴が空いています」

「……」

「今夜、見回りが通り過ぎたらそこから逃げてください」

「ひとつ、いい?」

「なんでしょう?」

「あそこって、もしかしてトイレ?」

「当然でしょう。他に何があるんです」

「……なんでもありません」

 まあ、殺されるくらいなら、全身が臭くなるくらい我慢しないと。

 あまりの臭さに失神しなきゃいいけど。

 こうしてわたしの脱走計画は今夜、実行にすることになった。

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