第4話


 少し歩いて思ったのは、この場所がやけに人間くさいということだった。

 もちろん実際の人間の臭いじゃない。同じ人間である私には、人間の臭いっていうと、汗臭さや加齢臭くらいしか思いつかない。あれはやだね。

 そういえば人間以外の動物たちにも加齢臭ってあるのかな。

 話が逸れた。

 何が人間くさいかというと、道が整備され、建物があることだ。

 地面は薄い青色の石畳。白線は引かれてないけど、見るからに手間が掛けられている。

 建物はレンガが積まれたつくりで、多くが二階建てや三階建て。庭はなく、横道がある場所を除いて、隣の家と隙間ができないようになっている。

 一言で言えばヨーロッパの町並みっぽいのだ。

 うん、あくまで『ぽい』だけなんだけど。

 あのトカゲ人間たちがこれらを造り、生活しているとは思えない。

 いくら生き物について詳しくなくても、トカゲが家を作って生活しているとは思わない。

 そういう意味では、異様で、現実離れしていると言わざるを得なかった。

 ザ・ファンタジー。

「あ、そうだ」

 どうせなら写真撮っておこう。見られるようなもんじゃないし。

 これを機にオカルト研究会に入るのもいいかもしれない。

 ポケットからケータイを取り出すと、カメラを起動し……、あれ?

「充電切れてる」

 電源を入れようとしても反応なし。うんともすんとも言わない。

 おかしい。まだ半分以上残っていたはずなのに、どうして?

 まあ考えても仕方ない。わたしは諦めてケータイをポケットにしまった。

 歩き始めてすぐに、私は少し息苦しさを覚えた。

 隙間が少なく、薄暗いからというのもある。

 だけど理由はそれだけではない。

 通行人の姿は無く、窓という窓、扉という扉が全て閉められているからだ。

 きっと先ほどの騒ぎが伝わっているのだろう。

 元々彼らしか暮らしていない場所に、自分たちの身体の一部を持ったものが現れたのだ。

 例えるなら、

 宇宙人が人間の爪や髪の毛を持って、会いにやって来た感じ?

 ……うん、そりゃ大騒ぎにもなるよ。

「失敗したかなぁ」

 そう呟いていると、どたどたと複数の足音がした。

 よかった。これで人探し、じゃなかった。トカゲ探しできる。

 できる。……できる。できる、はず。

 だめだ、どうしても嫌な予感がする。

 足音は徐々に大きくなり、ほどなくしてその集団が現れた。

 全員が同じ、赤い制服のようなものを着て長い槍を構えている。

「見つけたぞ!」

 集団の先頭にいるトカゲ人間が叫ぶや、わたしに槍の先を突きつけた。

「貴様を拘束する! 大人しくしろ!」

「え? ええ?」

 わたしは投獄されてしまった。

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