第6話 宙

例え、烏合の衆だったとしても、私たちは集まった。そのことに意味があったのだと、私は信じたい。




音も気配も消して動き回ることが得意な面子が集められていたとしても、人が集まっているはずの教室の静けさは異様だった。


「これは、また。」


カラリと、本人の代わりに音を立てた扉を掴んだまま苦笑する萩原に教室にいた二人は目を向けた。


「全員参加だって聞いたんだけど?」


違った?と確認するように首をかしげた萩原に二人の片方―黒蟷螂はおそらく苦笑しながら扉を閉めるように言った。


「俺とナル以外全員不参加になるのかと思って少しひやひやしたよ。」

「ほんっと、協調性ってモンが欠落したメンバーだよなぁ。」


扉を閉めると隔絶されたような感覚に陥るのはこの教室が視聴覚室で、他の教室より外の音を遮断するように作られているからだろうか。それとも、


「この三人が今みたいな状況だったら、私は一番安心するからいいんだけどね。」


背中を預けられる仲間だからなのかは、この三人だけがわかることなのだろう。


「そうだよなぁ、No.6が離反して、もう誰が味方かなんてわっかんねーもんな。」

「……仲のいい友人でいられると思ってたんだけどね。本当に。」


No.6……かつて白衣の彼、いや、彼女がいた場所が空白となった。沈み行くこの船から飛び出した彼女に果たして救いの手があったのか、誰にもわからない。


「ちなみに、ぴの字は彼女のために戦線離脱、骨ニキは、」

「No.5にいたやつに会いに行った。あっちも危ないかも知れねーからって。」

「……そっか。……やっぱりちょっと寂しいね……ちょっと前まであんなに楽しかったのに、さ。」


最初から脆く、危ういチームだと誰しもがわかっていた。だが、それと同時にこの瞬間がいつまでも続くのだと勝手に思い込んでいたのだと思い知らされる。


「そろそろ、腹をくくらないといけないかもしれないね。」


ガスマスクで見えないはずの瞳が揺れたのを萩原は見た気がした。





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