第4話 視聴覚室
昼というには遅すぎる二時半過ぎ。
珍しくちひろを含め現存する自殺部隊メンバー全員が集まった視聴覚室はカーテンが締め切られ、いつになく重い雰囲気だった。
殿「リンリン、久しぶりだね。最近保健室に来ないから心配してたんだよ?」
リ「え、あ、ごめーん。最近ちょっとテンション上がらなくてー。」
サボり魔であるちひろより校内で見かけることの少なくなっていた狂科に殿が声をかける。その声にいつもと変わらないテンションで返す狂科の声は静かすぎる教室に不釣り合いで虚しく響いた。
黒「みんな今の状況は各々把握していると思うが、教師の方から一応連絡させてもらおうと思う。珈琲。」
珈「はいよ。事の発端は昨日お前らが見てた週刊誌の記事だ。そこからこの学校の事やら、教頭の事についての報道と活動が激化した。」
ぴ「ちなみに週刊誌の発売が先週の金曜日。今日は木曜日で今日の朝刊にまた記事が記載されていました。」
どんなに追い詰められた中でも冷静に状況を判断できるということは、その後の展開を左右し、時に命さえ左右するとこの場の誰もが知っていた。状況判断能力の育成を謳ったこの学校の教育がこんな場面で役に立つとは皮肉なものだ。
さ「ちょっと探ってみたけど、主にこの動きを先導しているのはネタを売った阿武
ち「アフリカのハイエナってネーミングセンスに脱帽だね。」
さっちゃーがホワイトボードに写真を貼り付け名前を書きながら説明した人物に対して、ちひろが茶々を入れる。確かに読もうと思えば読めなくもなくていつもの任務なら笑い飛ばせただろう。
さ「あとは、黒川
だが、今日の部屋には笑いはなく冷静さを保つことに全員が全てを注ぎ込んでいるように見えた。あるい、周りの雰囲気を読んで行動しようとしているような危うさが感じられるようだった。
は「SNSでも揺さぶりがすごいね。ここの生徒はもちろん先生方のアカウントも探されて、外部から閲覧できるアカウントは軒並みやり玉にあげられてる。」
ち「外部からだけじゃなくて、内部からも解体が起こるように仕向けられてる感じの書き込みもちらほら。生徒が炎上避けて無実を主張してるのもあれば、乗っ取られが疑われるのもあるって感じ。」
朝からスマートフォンやパソコンを覗き込んでいた萩原の顔には疲れの色が見えたが、空調管理された室内での作業だったためか珍しく吐血せずに報告を終えた。
骨「外にいる報道関係者は許可を取っていないという事で今日のところは全員教師達に追い返されてた。今回の報道で生徒を矢面に出せなくなって風紀委員が全く働けなかったから鎮静にしばらくかかったみたいだがな。」
ナ「これまでの報道受けて一部生徒の不登校が始まってる。それが親の意志か、本人の意志がわからねーけど、確実に日を追うごとに増えてるらしいぜ。」
珈「最悪だな。」
珈琲の一言が、コトリ、と落ちた。
黒「本当にな、自分たちが無力に感じるよ。」
黒蟷螂の言葉を返せるものはいなかった。
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