第2話
――やまぬなぁ
――やまぬなぁ……
――いつになったらやむのだろうなぁ
――さあ、知らぬ
葉の影へと身を隠し、こそこそと話し合う森の住人たち。どす黒いススをまとめたみたいな塊たちは雨が止むのを待っていた。それらは影と呼ばれる者たち。実体を持たない魔人種のなれの果て。
五日目。そう、五日間この雨は止むことなく降り続けているのだ。しかも山の麓までおりれば青空が広がっていた。麓を一周してもその景色はかわらなかった。まるで、山だけ雨雲に覆われているように。
――あれが来たからじゃあないか?
――そうだ、そうだ。ちがいない
――あれとは何だ?
そのとき、ざあっ、と強い風がふいた。いつのまにか水面に立っていた一匹の狼。黒くつややかな毛並みと金色の目。何よりその四メートルほどの体格と存在感はまわりの生物を静まり返らせた。狼はくるりときびすをかえし、森の奥の闇へと消えていった。
――ふう、あれだけの存在感があるのに現れるのが突然すぎだろうなぁ
――あぁ、変わらずお美しい姿だぁ
――で、あれとは何だ?
――えー、それはなぁ……
――“
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