第18話《注意喚起》
あたしの名前は小島ハツナ。
登校した初っ端から緊急の全校集会が行われることに、なんとなく嫌な予感がしている高校一年生だ。
「悲しいお知らせがあります」
体育館の壇上に立つ校長先生が、丁寧かつ重苦しい口調で告げた。
「みなさん。もうご存知でしょうが、うちの学校付近には古くから【蛆神様】という神様が棲んでいます」
校長先生はスーツの内ポケットから黄色のポスターを取り出し、生徒全員に見えるように掲げた。
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※注意※
この近辺での願いごとはご遠慮お願いします。
願いごとによる事故等につきましては一切責任を負いません。
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「ここに書いてある注意文言があるにも関わらず、最近、我が校の生徒が願いごとを乱用していると報せがきています。私は我が校の生徒に限ってそういった不祥事はないと信じていましたが、ついに被害が起こりました」
校長は拳で口を隠し、咳払いをしてから前に向き直る。
「二年生を受け持つ社会科の山口先生。みなさんの間では彼の容姿がマスコットキャラクターの『黒ヒゲじじい危機一髪』に似ているから『黒ヒゲじじい』と呼んでいるそうですね」
舞台袖に目を向ける校長が、「山口先生、こちらへ」といった。
足を引きずりながら、山口先生が舞台袖から現れる。
悲鳴が体育館内に響いた。
「いくら容姿が似ているからといって、先生を《黒ヒゲじじいにそのもの》にしていいわけがありません! わかりますか? みなさん!」
上半身が有刺鉄線でぐるぐる巻き。有刺鉄線の隙間にカラフルなおもちゃの剣がいくつも突き刺さっており、刺しこまれた箇所から血がだらだらと垂れている。
山口先生の口は、黒ひげジジイと同じく猿轡がはめ込まれていて、もごもごと口を動かして何かを喋ろうとしていた。
「誰が犯人なのか今は問いません。もし心当たりがある方は後で職員室に来てください!」
マイクに向かって校長が声を荒げた。
生徒は全員黙って山口先生を見つめている。
「え、今更?」
トモミがぼそりと呟いた。
あたしも同じことを感じた。
終
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