第8話《必殺!気功拳!》


 あたしの名前は小島ハツナ。

 図書館では勉強よりも小説とか児童文学を読む方が好きな高校一年生だ。

 中間テストの時期が近づいてきた五月末。

 胸の手術が終わったミクとトモミとあたしの三人は、隣町の図書館で勉強会をすることになった。


「ウラウラウラウラ!」


 閑静な図書館の奥から子供の喚き声が聞こえる。

 見ると、髪を染めた小学生たちが本棚の間を駆け回っていた。


「なになに? 子供?」


 ミクが眉を寄せ、しかめっ面で子供たちを睨むように視線を送っている。

 そんなミクに対して、トモミは「ほっときなよ」と諌めた。


「あたしらがいうことじゃないよ」


「でもさー、やっぱ注意しないと」


「ああいうマナー悪いガキに口でいってもしょうがないよ。こっちが疲れるだけだし」


「えー……そう? ハツナはどう思う?」


 個人的にはミクの意見に賛成だ。

 公共の場の図書館で騒ぐのは周りの迷惑だ。常識的にマナーが悪いし、注意してやめさせるべきだ。

 けど、トモミのいうように、ああいうマナーのなっていない子供に対して、図書館の利用者であるあたしたちが直接注意するのは違うと思う。

 この場合、図書館のスタッフとか、もっと大人が叱るべきな気がする。


「ごめん。耐えられない。あたしやっぱ言うわ」


 堪えきれないミクが席から立ち上がった。

 すると。

 小学生たちと目があった。


「あちょー! 《お前はもう爆発する!》」


 謎のセリフと共に小学生がこちらを指を差す。

 

 ぱんっ!


 テーブルの上に置いたトモミのペットボトルが爆発した。


「は?」


「必殺! 気功拳! 【蛆神様】にお願いしてできるようにしたんだ!」


 小学生たちが指を差しながら走り寄ってきた。


「あちょー! 喰らえ! 《お前はもう爆発する!》」


 ぱんっ!


 小学生の頭が爆発した。


「うわ、あっぶなー」


 頭は、下顎から上部分が吹っ飛んでいた。

 首のない小学生の体は、指を差したまま後方に倒れる。

 目を丸くして驚く小学生たちが、トモミが手に持つ『手鏡』に映っていた。


「ボクたち。図書館では静かにだよ」


 そうトモミはいった。

 脳漿や返り血を頭からかぶった小学生たちが、呆然とその場で立ち尽くしていた。


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