エピローグ

モブキャラの露木陽也です。

 星道高校に入学してから1年間僕は友達ができないまま、ぼっちとして過ごしていました。出遅れたしまった僕はこのまま後2年はぼっちを貫くんだろうなと思っていました。もちろん友達は欲しかったし、リア充を馬鹿にしつつ、羨ましいとさえ思ったこともあり、僕も青春を謳歌したいなとか感じていました。しかしその願いは難しく、灰色の青春を過ごすのではと悟っていました。


 だけど2年に進学し、GWが明けた後からラブコメもののラノベのようなイベントが続いて、友達ができました! 

 いや、友達と言っていいのか、未だに戸惑う僕ですが、一応言質は取っている…………録音する必要があっただろうか? 実際に聞いたのは僕であるけど、もしかすると社交辞令として言った言葉であり、本当は友達ではないのだろうか? 

 そう考えると、段々と不安になってきました。で、でも例え向こうが友達と思われなくっても僕は友達だと……果たして向こうは友達だと思われて迷惑を掛けてないだろうか?

 はぁ~……話を変えよう。


 僕は桜小路さんに誘われて部活に入ることになりました。あの学校のアイドルの桜小路さんですよ!? モブキャラの僕が一生話しかけられず、ずっと遠くからしか見るしかできないと思っていたのに、一生分の運を使い果たした気分です。

 それにそれに桜小路さんは、実はオタクで僕と意気投合して、趣味も僕と全く似ているから、もう僕は嬉しくって幸せです。

 もしかすると僕はリア充街道まっしぐらな道へ進んでいるんじゃないかってくらい気分が良いです!



「…………はぁ~」


 体育の時間、二人一組のペアを組むよう先生から言われ、僕は一人ぽつんと誰にもペアを誘われずに立っていた。周りは既にペアが出来上がっている。余り物は僕だけ。やっぱり僕はぼっちということを再確認させられた瞬間であった。何がリア充街道まっしぐらだよ。


「ん? 露木は一人か? あー奇数か。なら先生とペアだな」


 余り物は先生とペアとなることが定石である。わーい、僕、先生とペア組んで嬉しいなー。

 一部の男子から忍び笑いが聞こえた。

 例え、僕に友達ができようと、学校のアイドルと楽しくオタク話をしても、僕がクラスでぼっちという事実は変わらない。


「はぁ~…………」


 僕は再び溜息を吐いて、幸せがまた一つ逃げていった。

 空を見上げると、曇り一つ無い快晴。燦々と太陽が降り注ぎ自己主張している。なぜ太陽はぼっちなのに輝いているんだろう。僕も一人でもめげずに太陽のように輝けるぼっちとして生きていたいな……。


 それから苦痛の体育の時間を終えて、昼休みになると部室へ向かった。部室なら一人飯でも周りから何も言われないし、静かに黙々と食べられるから部室が気に入っていた。これは桜小路さんに感謝しなきゃね。

 部室の鍵を借りて中へ入って椅子に座る。お昼はいつものおにぎりとお茶をコンビニで適当に買ってきたもの。

 僕はおにぎりの包装紙を剥がしていると、部室の扉が開かれた。視線を向けた先に桜小路さんが弁当箱を持って中に入ってきた。


「やっぱり部室にいたのね。えっと……一緒に食べてもいい?」


「あ、ぼ、僕のようなミジンコで良ければどうぞ! ぼ、僕は隅でた、食べているので……」


「離れたら会話できないよ」


 少し拗ねた口調で桜小路さんが言うと、隅へ移動しようとした僕は元の位置へ戻って座り直した。対面に桜小路さんが座る。

 共通な趣味を持ち、少しは慣れたかと思っていたけど、やはり相手が学校のアイドルというだけでまだ緊張してしまう。今でもこれが夢なのでは? と半信半疑である。


「…………」


「…………」


 お互い会話がないまま昼食を摂る二人。屋上で会話したオタク話は一体どうしたんだろうか。僕は桜小路さんへチラッと視線を向けると、間が悪いことに桜小路さんも僕を一瞥していた。そのため視線が重なってしまう。


「ふふ」


 すると桜小路さんが笑い、釣られて僕も笑った。


「この前はあんなにオタク話をしたのに、いざ何か話そうとすると緊張しちゃうね」


「う、うん……。ぼ、僕はそうだけど、桜小路さんは別にコミュ障とかじゃないんじゃ?」


「う~ん……私ってオタクの友達がいなかったから、どう接したら良いのか距離感が分からないのよ」


 それは何となく分かる気がした。まだ友達に成り立てだと、いざ何を話したら良いのか分からなくなってしまう……って今まで友達がいなかったから経験談じゃないんだけど。


「えっと……き、昨日のアニメ観ました? あの妹系のラブコメです」


「私とお兄ちゃんと秘密な関係でしょ? もちろん観たわよ! やっぱり妹ちゃんの健気でお兄ちゃんLOVEで一途なところが可愛くっていいよね!」


「それ分かります! 観ていてむず痒くなると言いますか、僕も妹にあんなこと言われてみたいなって思ったりして……ってこれは別に二次元の話であって三次元は違いますけど」


「え? 露木君って妹がいるの?」


「ま、まあ……で、でも別に妹に好きとか言われたいとかじゃないですよ!? あくまで二次元の話であって、三次元と混合しないでくださいよ? 何でもかんでも二次元と三次元を混同する人がいますから」


 僕と桜小路さんはしばらくアニメの話で盛り上がって、予鈴が鳴るギリギリまで語り合っていた。時間が忘れるくらい談笑し、僕は桜小路さんとオタク話ができる事が凄く嬉しく、毎回この新たな日常を楽しみにしていた。


 青春ラブコメ部。これからどんな物語が始まるのか分からないけど、僕の胸はドキドキと高鳴ってラブコメのようなイベントが始まる予感に胸躍らせていた。

 ぼっちだった僕に友達ができ、部活にも入り、いつもと違う日常がこれから始まろうとしている。

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青春ラブコメ部! 凉菜琉騎 @naryu0

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