第17話キセキをセルフプロデュース
もし貴方が6-7億の宝くじに当籤し、悠々自適に生活したいと望むのであれば、
一口、2-300円の富籤を買い購めんければならんのであり、100%貴方がそれを望むことなら、
当籤することであろう。
それがスカ籤だっとしても、八百長やなんだと騒ぐことなかれ、それは貴方が100%望んではいなかった、
その結果として起こった現象であることを自覚し、またの機会に活かさねばなるまい。
Cabo de Buena Esperanza
スペイン語で喜望峰、モーテルごときになんたる大層なネーミング!
イタリアン出身のシェフが常駐していると謳いながら、 店名はスペイン語なんかいっ!
全くわけがわからない。
この、臼井佐知子という女史と対面した端(はな)より、わたしはこうなることを、脳内で念写し、懇願していたのであり、
それはもはや、対面するより前、この内覧会という口実のもと、信楽くんだりまで派遣されたときからの決定事項という気さえするから不思議なものだ。
だからこそ、いまこうして清掃待ちのため、駐車場の空き待ちの車列に並んでいるのであり、
つぎにお呼びがかかれば、ガレージに車を停め、この、Cabo de Buena Esperanza へいざ突入しようという段階、
結句、わたしには一切の気の迷いなど無かったということが今このとき証明される。
奇跡、それは寝て待つものではなく、自分に深くコミットできたものだけが享受できるものなんだ。
結果ではなく、あくまで自分にというのが味噌。
難しいのは、それを余りにも執拗に追いかけてはいけないことだ。
こう、道端に、かわいらしい子猫が居たとすると、あら、かわいいからといって、一気に近寄り、抱き寄せてはいけない。
その子猫は怖がり、後ずさり、魔の手から逃れようとすることであろう、
執拗に追ってしまうのは、自分にではなく、結果にコミットしすぎてるからなわけですよ。
ちょうどの塩梅、そんなものできるわけねぇだろ!あきらめてはいけない。 ときにはマングースのように一度喰らいついたなら、絶対に放さず獲物を仕留めるまで諦めてはならん、
言い条、この一撃で仕留めてやろうとおもえば、「いたた!なにすんねん!」包丁を持ち出してちょん切られ玉砕。
BGMは西野カナ-会いたくて 会いたくて
「ぼくはこうなるんじゃないかって想ってましたけど。むしろこうなりたい、いや、なることに対して抗うも抗わないもなく、自分にコミットし続けただけのような気もします。
ねぇ、佐知子さんは奇跡を信じますか?」
「キセキってなにかしらね?それは一見、尊いものに思えるのかもしれないけれど、案外そうでもないように思うわね、
あくまでわたし個人としての感想だけれど。」
「ねぇ、佐知子さん、神はきっと居ますよ?」
「ふーん、君が居るんだと思えば居るだろうし、君が居ないと思えば居ないんじゃない?」
我慢ならんくなったわたしは、佐知子の身体を引き寄せ、一瞬躊躇するのをお構いなし、唇を奪った。
「いやっ、」一瞬そう、彼女の口から洩れたような気もするが、気にしない。
前後裁断、今この瞬間にできることに全力を注げばいい、その結果、打たれた白球がバックスクリーンに吸い込まれてもね。
重要なのはつぎに遺恨を残さないこと。
全力を注いで打たれたのであれば、悔いは残らない、めいっぱい腕を振り、腕が千切れたって構わない、そう思えるかどうかの差。
もしそこで、腕が千切れたら痛いだろうな、なんて思ったら、腱はあえなく断裂、選手生命が終わりを告げることだって有り得る。
もうね、最後は人間力勝負、
「おれはこゆう人間だ?」
今更、取り繕ったとて、どうなるものでもない。
ただ、いまこの瞬間、持てるすべてを晒せばいい。
そう、今生のカルマは今生で解消せねばならんし、前世からのトラウマも解消せねばならんのだよ?
一休さんが囁く、ベリービジー、忙しいのだよ今生は。
コンコン、ガラス窓をノックの音、
慌てて唇を離し、案内係の50絡みの掃除婦風情のおばちゃんが「空きましたよ。どうぞ。」
口パクよろしく、読唇術が容易だ。
おばちゃんが指差す方向に、ハンドルを切る臼井氏、
またも、左右のドアミラーをせわしなく確認しながら、一発で白線の真ん中に駐車完了。
パーキングブレーキを引くより前に、車外に飛び出ていたわたし、
地面に刻まれた数字は「42」、いわずとしれた、MLBの永久欠番であり、ダレルメイの背番号、
生え抜きのNPBプレイヤーなら、まず避けたい番号、縁起なんてものは所変われば。
持つ意味もぜんぜん違う。
すたすたと先陣を切る臼井氏に従い、自動ドアをくぐりぬけ、
タッチパネルの1個だけ点灯するそれを、同時にタッチするかたちとなり、排紙されたレシートは二人とも無視、
エレベーターに駆け込み、4Fのボタンを押した。
BGMは、globe / Can't Stop Fallin' in Love 脳内で音量MAX、
わたしの中に宿る、唯一絶対神、Meeちゃんが歌っていた。
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