第18話 やる気ゼロのE組
翌朝、6時30分。 目覚まし時計の音で目を覚ました誠一郎。布団が無駄に膨れているのき気づき、めくってみるとそこには
「・・・・・」
エリスがいた。誠一郎の首に手を回し密着したまま幸せそうな顔して寝ていた。最初は追い出そうとしたが手を回されて嬉しそうな顔をしていたため追い出す気が削がれてしまいそのままの姿勢で横になっているとやがてエリスも目を覚ました。
「おはよう、誠くん・・・」
寝ぼけ眼の目を擦りながら挨拶するエリスに挨拶を返す。
「なんでエリスが布団のなかに入ってるの?」
とエリスに聞くと、
「夜中にうなされてたから布団のなかに入って密着したの。そしたら落ち着いた。だからそのまま寝ることにしたのよ」
自分が夜中にうなされていたと知り驚くが
同時にエリスのおかげでしっかりと睡眠をとれた。これはエリスに感謝しなければと思い
「ありがとう、エリス。おかげでぐっすり寝られたよ」
感謝の言葉を口にする。
「別にいいわ、私がしたくてしたことだし」
そっぽをむいて顔を赤らめる。
「もう起きましょ、遅刻してしまうわ」
照れ隠しなのか、早口でそう言うとベッドから出た。
「だけど、寝てるときに布団のなかに入るのは起きたときにびっくりするからやめて」
いや、これはマジで。
「なら、最初からならいいのね」
意地悪っぽく言ったのに対して誠一郎は
「最初からなら別にいいよ」
もう彼女だしねというとエリスが顔を真っ赤にして、もう、と短く呟いた。
朝のホームルーム。
「一つお知らせがあります。一年に一回開かれる、覇王剣祭の時期が早まることになりました。今日から二週間後に予選が始まるのでそれまでに個人戦かタッグ戦、もしくは出場しないかを決めて担任に書類を提出してください。期限は今週中になります。出さなかった場合、欠場とみなすので注意してください」
朝のホームルームは覇王剣祭の書類を配るだけで終わり、担任が教室を出た途端に教室全体が騒がしくなる。
「どうするー?」
「私は参加しなーい」
「お前らどうする」
「参加するわけないじゃん」
「勝てるわけないって」
E組のほとんどの人間が諦めているが一部の人間の目には火が着いていてそれを見て、誠一郎は
「なあ、学級委員長。覇王剣祭出る?」
と闘志を燃やしていた学級委員長に声をかける。
「当たり前だ。自分の力がどこまで通用するのか確かめたい」
それに
「あそこで、最初から諦めているやつと一緒にされたくない」
・・・それには同感だ。だが声に出すのはどうかと思うぞ。完全に睨まれてるぞ。
しかし学級委員長はなんにも感じていないようで誠一郎の横を通りすぎる。
「お前がやつらと一緒じゃないことを祈るよ」
あんなやつらと一緒にするなと心のなかで呟き授業の準備をする誠一郎だった。
放課後、教室を出るとエリスがいた。
「誠くん。一緒に帰ろ」
エリスは誠一郎と一緒に帰るために教室の外で待っていたようで、二人並んで歩くと他の生徒とすれ違う。その度に他クラスの生徒に憎しみを込めた視線を浴びせられるが、二人はその視線を無視して歩く。校舎から出て少し歩くと
「やあ、久しぶりやなあ」
正春に声をかけられた。こちらに近づいてくると、
「覇王剣祭出るんやろ、練習始めてん?」
「まだ始めてないけど、明日から始めるよ」
「なら、話は早い。明日四人で練習やらへん?誠一郎も仲間と自分の能力をはあくしたいやろ」
場所も取ってあるしな、と正春。誠一郎達にとってこんなうまい話はない。なので
「わかった。明日のいつにする?」
練習をいつやるか決めるために三人で校門へ向かう。そして校門を出ると、
「そうやな。放課後の4時30からでどうやろか?」
誠一郎は特に用事はない。エリスとはルームメイトであり彼女でもあるが行動を制限しているわけではないためエリスに用事があるのかはわからない。そのため
「エリスは明日暇?」
暇かどうか尋ねると
「用事はなにも入ってないよ。だから誘いに乗ろ」
「わかった」
二つ返事で了承してくれたためすぐに決まった。
「まっさーも来るさかいよろしゅうな」
「政弘くんもいないのに勝手に決めていいんですの?」
「いける。昨日のうちに練習するって決めとったし、エリスも来るって言えば喜んで来るやろ」
「確証ないのかよ」
「確証はないのね」
二人同時に呟き二人同時に肩をおとしたのであった。
家に帰るとすぐにジャージに着替えた。
学校内では制服で行動しなければならないという校則がある。しかし校門を越えればその校則には縛られない。だから動きやすい服装にしたのだ。
「俺がいつも自主練している場所はここから少し距離がある。だけど転移魔法や飛行魔法などの移動系の能力を使わず、魔力を起こして足と腕に通したままダッシュで走ってもらうよ。距離はここから7キロ。それじゃ用意スタート」
誠一郎は走り出した。突然走り出した誠一郎に驚くがエリスもすぐに後を追った。
20分後、誠一郎が目的の場所に着いた。後ろを向くとエリスが息を切らしながらも走ってきた。初めてにしてはとても頑張ったと思う。なぜなら、これを初めてやった人は5キロも持たずに倒れてしまうからだ。それを息を切らしながらも7キロ走りきった。
「お疲れさま。はいスポーツドリンク。これは魔力を回復する効果のあるものだから魔力を使ったあとは飲んだほうがいいよ」
スポーツドリンクをエリスに渡す。
「ありがと、誠くん。それにしてもこのランニング方法すごいね、すごくキツかったよ」
それを受けとるとキャップを開けて飲んだ。先程の 魔力を使用したままダッシュするトレーニングは、本来はダッシュだけでなくランニングも入れて交互にやることで体力と体幹を強化し、さらに魔力制御も同時にできるため誠一郎は重宝していた。
「学校がない日はこれを午前中にやって、午後からはさっきのにランニングも混ぜるからもっときついよ。基礎体力の強化だけじゃなく技術的なこともやるしね」
「あれを学校のある日に毎日やってるの?知らなかったなあ。付き合い始めるまで帰ってくるのが遅かったのはこれが理由なんだね」
「付き合い始めてからはやってなかったけど、ちょうどいいタイミングだし再開することにするよ。よかったらエリスもたまには一緒にトレーニングしない?」
付き合い始めてからやっていなかったが明日から、連携の練習とかもするため再開しようとしていた。
「わかったわ。私も参加させてね」
「もちろん」
二つ返事で了承した。
「そろそろ休憩終わって、少し打ち合いするか」
誠一郎とエリスは打ち合いを少しして家に向かう。
「ありがとう、練習に付き合ってくれて。お礼に夜おごるよ」
「え?ありがとう!」
夜、おごる約束をして家に向かった。
夕食を食べて、家に帰ると、疲れたのかすぐに寝てしまった。
次の日の朝。学校に向かう途中で楓に会った。
「おはよう、誠一郎」
そう言って楓は誠一郎の右腕に抱きつき腕を絡める。それを見て対抗心を燃やしたのか左腕に抱きつき腕を絡めた。そのまま学校に向かうが近づくにつれて学園の生徒が増えて次第に人口密度が高くなる。さらに視線も強くなってきて頭が禿げるくらいに見られるようになった。
「さすがに二人とも離れようか」
視線に耐えかねて離れてくれと言うと素直に離れてくれた。
「またあとで」
二人と分かれると自分の教室に入っていった。
続く
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