誰そ彼【マレーシア】

 友人宅のトイレで用を足していたDさんは激しいノックの音に驚いた。ノックに続き、


「大丈夫? ちょっと、ねえ! 早く出て!」


 友人の悲痛な叫びも聞こえる。

 何事かと急いで服を整え、ドアを開けるや否や友人が縋りついて来た。


「大丈夫だった!? 怪我はない?」


 自分は無事だと言い何とか友人を落ち着かせようとしたのだが、友人はDさんの腕を掴んでギャッと悲鳴を上げた。


 歯型のようにも見える、鮮やかな青色の傷がくっきりと腕に残っていた。


 噛まれた覚えは勿論ない。


「黄昏時にはね、家の中で一番小さな部屋に神様が来るのよ」と友人は言った。


 それは、本当に神様だったのだろうか。

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