第7話 たまには……

 ポートブリッジに戻った俺たちを待っていたのは、一風変わった客だった。全部で6名それぞれ種族が違い、しっかり武装までしている。少なくとも、この界隈ではあまり見ないスタイルだ。

「おう、お前さんたちも、いわゆる冒険者か?」

 炎天下の中、熱されたコンクリの上で立ち話などしたくもないが、いかにも訳ありという客だ。リズには任せられない。

「ああ、そんな感じかな。もう聞いてるかもしれないが……」

 恐らくリーダだろう。長剣を携えた人間の青年が言いかけたが……。

「『モースの大渦』だろ? あんなところに何しに行くんだ?」

 すでにセンターから行き先は聞いている。モースの大渦というのは、大洋のど真ん中にある巨大な渦だ。その辺りは慢性的に悪天候なので、基本航路からも外れている。

 さすが俺。ろくな客を引かない。

「行けば分かる……といいたいが、この船に飛び込んでもらいたい。ど真ん中に飛び込めば、ある世界にいけるはずなんだ」

 おいおい、待ってくれ!!

「お前さん、変な薬とかやってないよな? あとは体が巨大化する変なキノコとか……」

 冗談じゃねぇ!! なんで好き好んで海にダイブするんだ!!

「当然、他の飛行艇屋は拒否したよな。で、最後に回ってきたのが俺。違うか?」

 当たり前の事を聞いちまったぜ。ったく……。

「その通りだよ。もうお宅しか残っていない。無理を承知で頼む!!」

 すると、全員が熱いコンクリの上に土下座した。なんだよ、全く……。

「分かったから土下座はやめろ。危険手当込みで、金貨1000枚。払えるなら受ける」

 思い切り吹っかけてやった。これでも安いくらいだ。どう見ても払えそうに見えなかったが……。

「おい、みんな財布を出してくれ」

 見る間にコンクリの上に積もって行く金貨。おいおい、隠れ金持ちかよ!!

「間違いありません。金貨1000枚です」

 燐光を発しながら、隣に立っていたリズがつぶやいた。

「ああ、分かった。金貨100枚でいい。値切られたら断ろうと思っていたが、それだけ根性見せられたら、俺だって適正価格で運んでやるさ。乗ってくれ」

 俺は後のことをリズに任せ、操舵室に入った。エアコンが心地いい。

「さて、とんでもねぇ客だな。海にダイブとは……」

 自動操舵装置にモースの大渦までのデータを入力する。そこからは手動操舵だ。当たり前だ。飛行艇は海を走るようには出来ていない。

 傍らにある受話器が鳴った。

『トラさん、準備完了しました』

 客室から船内放送でリズが報告してきた。

「了解。お前も早く操舵室に来い」

 離陸の準備は整った。後はいつも通り離陸待ちだ。

「ふぅ、やっぱりエアコンは偉大な発明ですね」

 リズが操舵室にやってきた。

「今離陸待ちだ。飛び立ったら2日でモースの大渦だ。久々に長距離飛行になる。覚悟しておけ」

「はい!!」

 元気いいな。全く……。

「管制から許可が出たら離陸しろ。俺はもっと客と話す必要がある」

 リズに指示を出し、俺は外部通路を通って客室に入った。茶色を基調とした落ち着いた室内。全面ピンクよりはマシだ。

『ポートブリッジよりトラ。離陸を許可する。モースの大渦とはね』

 手持ちの無線機ががなった。まあ、普通は呆れるだろうな。

「俺もどうかしてると思うぜ。じゃあな、幸運を祈っていてくれ」

 リズの操舵で地上を離れた飛行艇は、ゆっくりと高度を上げていく。まあ、大丈夫だろう。

「さて、お前さんたち。訳がないとは言わせないぜ。あんなところになにしに行くんだ? まあ、報酬は口止め料込みにしてある。言いたくなければ、俺は引っ込むが……」

 しばしの沈黙ののち、リーダー格の青年が口を開いた。

「最初にもう一度礼を言わせてもらうよ。こんな馬鹿な依頼を受けてもらえるとは……」

「なに、俺の客は馬鹿ばかりだ。今に始まったことじゃねぇ」

 俺は猫用タバコに火を付けた。煙はほとんど出ないので、そこは安心してくれ。

「悪いが詳しくは説明出来ないんだ。王令で口止めされていてね。1つ言えるのは、バケモノ退治というくらいかな」

 青年は困り顔でそう言った。

「王令で口止めされたバケモノ退治とは、ずいぶん穏やかじゃねぇな。まあ、結構もらったからな。協力出来るところは協力する」

 まあ、こんなもんか。俺は客室から出て操舵室に戻った。

「バケモノ退治だとよ。また貧乏くじ引いたぜ」

 俺はリズに声を掛けたが、返事がなかった。

「おい、リズ。どうした?」

 俺の声にやっとリズが反応した。

「あ、あああ、すいません。ちょっと思うところが……」

 思うところ?

「なんだ、話してみろ」

 俺はシートベルトを締めながら、リズに聞いた。

「モースの大渦が出来たのは、人間時で今から700年前なのですが、ちょうどその時期に天界から地上に追放された神がいまして……」

 リズはこめかみを押さえながら言った。

「ほう、そんな事もあるんだな。それで、それがどうかしたか?」

 俺はリズから操舵を引き取り、俺は自動操舵装置に切り替えた。

「憶測なので今は何とも言えません。その時が来たら話します」

 ……フン、こっちもだんまりか。

 あとは2日くらい飛べばモースの大渦だ。恐らく飛行艇初だろうな。あの大渦に突っこむなんて。正気の沙汰じゃねぇ……。

「リズ、動きそうな物は全部固定しろ。こんなアホな飛行他にないぜ」

 リズが慌てて動く中、俺はただ正面を見つめていた。


 ポートブリッジを発ってからおよそ2日目。飛行艇はモースの大渦に接近していた。

「全く、ひでぇ嵐だな」

 予想はしていたが、ここの嵐はひと味違う。バラバラになるんじゃねぇかというくらいの暴風と強烈な雨。オマケに雷付きだ。普通だったら、とっくに帰っている。

「ちっ、土下座までされたからな……」

 男が頭を下げるってのはよほどのことだ。しかも、俺は猫だ。普通は小馬鹿にして見やがるものだ。これは、簡単には帰れねぇだろ?

「モースの大渦、視認しました!!」

 リズの声に前方見ると……あった。不気味に渦巻く海面が。

「3年ぶりだが……デカくなってる気がするぜ」

 この大渦の研究者は多いが、なにせ、まともに近づく事すら困難だ。今回だって、リズの神様パワーがなければ、ここまでは来られなかっただろう。

「強烈な『力』を感じます。人間ではありません」

 リズの声に緊張が走る。

 そりゃ、人間の力でここまでデカい渦は作れないだろうぜ。作る意味も分からねぇしな。

 俺は客室への受話器を取った。

「渦に来たぜ。あとはどうするんだ?」

 やる事は聞いている。まあ、儀式みたいなもんだ。

『予定通り渦の真ん中に突っこんでくれ』

 ……嫌な予感しかしねぇが、やるしかしねぇな。

「分かった。しっかりベルト締めて、どっかに摑まってろ!!」

 椅子にシートベルトはあるが、失敗すればこの飛行艇はバラバラになる。もちろん、命なんてない。

「行くぜ!!」

 半分は自分に言い聞かせ、俺は飛行艇の船首を渦巻く海面に向けて急降下した。高度計の針が急速に減っていく。高度360メートルからのダイブである。

「リズ、サポートは頼んだぜ!!」

「もうやっています。安心して突っこんで下さい!!」

 困った時の神頼みってか? まっ、都合がいい話しだ。

 俺の飛行艇は、狙い違わず渦のど真ん中に突撃した。ここに来て思い出したが、飛行艇は海中を進むようには出来ていない。むしろ、不時着水に備えて浮くように出来ている。

 しかし、俺の飛行艇はまるで吸い込まれるように渦の中へと消えた。


「なんだ、ここは……」

 辺り一面真っ暗なので、あらゆる灯火を付けたが何も見えない。いけ好かない場所だな。

「おい、これからどうすればいいんだ?」

 俺は客席へ言葉を投げかけた。

『あとは任せてくれ。世話になった』

「敵性反応。3時方向です!!」

 俺が飛行艇を気持ち悪い地面に下ろす前に、リズが叫んだ。

「土下座までしてくれたんだ。ここから先は無料オプションになる。『航法装置』が妙な反応を示しているんだ。近くまで送ってやる」

 まさか「神が乗っています」とは言えない。乗りかかった船だ。

『危険過ぎる。これ以上巻き込むのは……』

「元々危険だ。今さら1個ぐらい増えても問題ねぇ。客は黙って乗っていろ!!」

 受話器を叩き付けると、俺は改めて辺りを見る。真っ暗。以上。

「高度100をキープ。それ以上上げると天井に当たります!!」

 天井? 何だそりゃ?

「分かった。それで、その『敵性反応』の位置と距離は?」

 ソロソロと飛行艇を進めながら、俺は3時方向に船首を向ける。ったく、またポートブリッジの語りぐさを作っちまったな。

「12時方向。距離5000。射撃準備して下さいね」

 高度100をキープしながら進む事しばし、俺にもなにか嫌な感じがしてきた。

「おい、リズ。この先に何が待っているんだ?」

「この歪んだ力……神です。天界を追われて腐った破壊神……」

 あっ、何だって?

「破壊神ってなんだ?」

 もう距離は近い。さすがに分かる。

「その名の通り、地上に災厄を撒き散らかす神です。こまめに駆除はされているのですが、これほどのものを見逃すとは神の怠慢ですね。しかも、その駆除を『勇者』とか祭り上げて、地上の者に頼むとは……」

 珍しくリズが怒っている。よく分からんが、話している暇はなかった。「それ」が目の前にいたのだから。今までの闇の世界が嘘のように明るい。

「なんだ、あの超弩級にデカい蛇は!!」

 そう、目の前には巨大な蛇が横たわっていた。おいおい、あんなもんどーすんだよ!!

「射撃開始!!」

 あんなのに20ミリで効くのか?

 疑問に思いながら引き金を引くと、通常の砲弾ではない光る何かが発射された。

「蛇神グリーモフ。あれでも神なので、通常兵器では傷1つ負わせられません。ここは、私の力で……」

 このクソ忙しい時に、船内放送の受話器が鳴った。

「なんだ、今忙しい!!」

『俺たちを降ろしてくれ。これじゃ意味がない!!』

 あっ、忘れていた。

 俺が一瞬飛行艇の底を地面に付けた瞬間、6人がパッと散って蛇と戦い始めた。

 俺は、とりあえず機関砲で頭を滅多撃ちにしてみたが、さして効いているようには思えない。

「地上チームの牽制を。とにかく頭を撃ちまくって下さい!!」

「お、おう!!」

 リズの声に応えつつ、俺はひたすら引き金を引き続けた。どうやら効いているようで、鬱陶しい物を払うように、口から緑色の光を放った。

「危ねぇ!!」

 ほとんど反射のレベルで舵を切り、その緑の光線を避けた。

「ったく、これでも食らいやがれ!!」

 俺はコンソールのカバーに覆われた赤いボタンを叩き押した。

『魔力砲エネルギー充填30%』

 無機質な声が操舵室に響く。機械が発している声だ。

 法律で決められているのは「自衛のために最低限の武装」だ。上限はない。常に切り札は持っておくものだ。この飛行艇の隠し球がこれ。さすがに戦艦並とまでは言えねぇが、駆逐艦辺りが装備している小口径魔力砲を積んである。使うのはこれが始めてだがな。

『エネルギー充填率50%』

 コイツの欠点は発射までに時間が掛かる事。その間、ひたすら20ミリで撃ち続けては、緑の光線を避けまくる。俺の腕も捨てたもんじゃねぇな。

『エネルギー充填率75%』

「おい、あいつらはどうなっている?」

 俺はリズに聞いた。往復するまでが仕事。気にしねぇとな。

「大丈夫です。善戦しています。あの武器欲しいかも……」

 んなもんどうするんだ!?

『エネルギー充填率100%。砲撃可能』

 待たせやがって。一発ぶちかましてやらぁ!!

 俺は外部スピーカーのスイッチを入れた。

「一発ぶちかます。待避しろ!!」

 同時進行でターゲットロック。1つ覚えだが頭部だ。

「地上チーム待避完了!!」

 リズが叫んだ。その瞬間、俺は発射ボタンを叩き込んでいた。そして、閃光と大爆発。爆風が派手に飛行艇を揺さぶる。

 全てが収まったあと、効果は覿面だった。あの馬鹿蛇の頭は跡形もなく吹き飛んでいた。

 しかし、それでは終わらなかった。すぐに頭部が再生されて行く。クソ、バケモノが!!

「あんなのあったら言って下さいよ。もっと作戦考えたのに!!」

 リズが文句を言ってくるが無視した。前のように、ひたすら地味な牽制作業に専念した。

「ああ、言っておくが、あれは1発だけだ。ジェネレータが焼き切れるから、2発目は撃てねぇ!!」

 そう、魔力砲は1発だけだ。だから隠し球なんだ。

「地上チームに賭けましょう。こっちは適当に撃ちまくる感じで」

「分かった!!」

 高度100の制限があるのでさほど大きな動きは出来ないが、それなりの機動を描きながらデカ蛇をひたすら撃ちまくる。

 何度も言っている気がするが、この飛行艇は戦闘艇じゃねえ。さっきの魔力砲はイレギュラーだ。基本的に戦闘行為には向いていない。

「トラさん、さすがです。この空間でこの機動は、そうそう出来るものではありません!!」

 必死だよ。こっちは。言わねぇけどな!!

「アレはどこを狙えば倒せるんだ?」

 あくまで牽制だが、多少は意味がある場所を狙いたいものだ。

「胴体中央部の奥深くです。私の力では届きません……って、トラさん何するんですか!?」

 俺は飛行艇を、デカ蛇の胴体中央部に向かって突撃させた。こういうのは柄じゃないんだが、チマチマ戦うっていうのは性に合わねぇ。

「リズ、なんか防御的なものを。一気に行くぜ!!」

 俺は操縦桿を強く握り、デカ蛇の胴体に向けて突っこんでいく。まともじゃねぇな。俺も……。

「防御的な物を展開しました。どうなっても知らないですよ!!」

 上等だ。行くぞ!!

 飛行艇は目の前に接近していたデカ蛇の胴体にそのまま突っ込み、反対側に突き抜けた。

 上空で見ていると、飽きたかにデカ蛇の動く力が弱っている。しかし、突っこんだ場所が微妙に悪かったのか、致命傷にはならなかったようだ。全く、しぶとい野郎だ。

「さっきの突撃で『生命点』を正確に特定しました。データは設定済みです!!」

 俺のモニターにも飛行データが届いている。右14度か……。リズも結構熱いな。

「機関砲じゃ届かねぇ。やるぞ!!」

「はい!!」

 大事な飛行艇を2度も弾丸代わりに使う。普通だったらあり得ないな。

 しかし、あり得ない事をやるのが俺だ。リズの割り出したデータを信じて、俺は飛行艇を全速力でデカ蛇の土手っ腹に突っこんだ。ミシミシと飛行艇が軋む音が聞こえるが、こっちは軍用スペックだ。ただじゃ壊れねぇ。

 そして、反対側に突き抜ける。高度を取ってデカ蛇を観察すると、凄まじい悲鳴を上げながらバタバタと暴れ、そして動かなくなった。地上組の困った顔が見えそうだ。結果として、オイシイところを持っていっちまったんだからな。

「これで任務完了ですね」

 リズが疲れた顔でこちらに言う。

「サービスしすぎだな。とりあえず、着陸して地上組を迎えなきゃな」

 俺は飛行艇を着陸させた。死闘を終えた地上組が乗り込んでくる。さて、なんて言っていいものやら……。

「悪いな。俺が倒しちまった」

 とりあえず、リーダー格の青年に声を掛けた。

「とんでもないです。こっちもかなり危なかったので……でも、飛行艇で突っこむなんて普通は考えませんよ。あなたが勇者です!!」

 どこまでも爽やかな青年だな……。

「勇者なんて柄でもねぇよ。疲れているだろ。客室で休んでいてくれ。あとは俺本来の仕事だ」

 それだけ言い残すと、俺は操舵室に戻った。

「リズ、帰るぞ。今までの飛行データを送ってくれ」

 蛇が死んだ事で明かりとなる物が何もない。ここまでのデータが頼りだ。

「はい、急いで下さい。グリーモフが倒されたことで、この空間が急速に閉じています。最悪、帰れなくなる恐れが……」

 リズが嫌な事を言う。冗談じゃねぇ。

「早く言え!! 急ぐぞ」

 俺は飛行艇を最高スピードで飛ばした。そして、今まさに閉じようとしているモースの大渦から一気に飛び出た。上空で飛行艇の体勢を整えると、俺は小さく息をついた。いつも嵐なのに、嘘のように好天である。

「この渦も天候も神さんが原因だったか……。で、あの神はなんで追放されたんだ?」

 おなじみ、猫用タバコに火を付けて、俺はリズに聞いた。

「……しょうもない理由なんですけど、聞きます?」

 ……逆に気になるじゃねぇか。

「いいから話してみろ」

 まあ、どうでもいいのだが、ポートブリッジまでの暇つぶしだ。

「それが……トイレで隠れてタバコ吸っていいるのがバレて……他にも壁に落書きしたり、色々ありまして」

「単なる思春期のガキじゃねぇか。それで追放してあの様かよ!!」

 地上の迷惑だ。アホ!!

「ええ、なんだか申し訳ないです……」

 全く、本当にしょうもない話しだったな。

 俺は操舵を自動に切り替え、そっと目を閉じたのだった。


 ポートブリッジの夏もようやく終わりに近いはずだが、相変わらず暑さは変わらなかった。

 俺の飛行艇の先端には、黄色い紋章のような物が付いている。大渦の絵に「モース」と書かれている。これは、世界各地にある難所を乗り越えた証として付けられるもので、操縦士の腕を示している。まあ、宣伝だな。

 あちこち痛んだ機体の整備をしていると、巨大な定期船が頭上を通り抜けていった。この時間だと、王都発ポートブリッジ経由大洋の向こうにあるポートリンデン行きだな。

 さて、そんな事はどうでもいい。やはり、あのデカ蛇に突っこんだのは無茶だったらしく、修理が必要な箇所が多々ある。例によって最強の整備士集団を呼んだが、「寿命」の一言で終わってしまった。

「何が寿命だよ。好き勝手言いやがって……」

 ブチブチ文句を言っていると、どこからともなくリズがやってきた。その手には飲み物の入った瓶がある。

「どうですか?」

 瓶の1つを寄越し、リズが聞いてきた。

「ああ、何とか飛べる程度にはな。だが、これじゃ仕事には使えねぇ」

「ということは、廃棄ですか?」

 リズが恐る恐る聞いてきた。

「大丈夫だ。俺が知っている工場がある。これを機にちょっとしたバカンスだな」

 まあ、たまには長期休暇もいいだろう。俺はクソ熱い日差しを送ってくる太陽をちらっと見上げたのだった。

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