第14話 奇跡 pattern:なつき
そのまま流れて終わる。
そう思ってた。
「やった…!!」
石と石の間に小瓶が挟まったのだ。
そんな事ってある!?
私はずっとその輝きを見ていた。
お願い。気付いて。みつる。
これが私の最後のチャンスだから。
祈るように、私は小瓶に手を合わせた。
あの子《みつる》が拾うんです。誰も拾わないでください。
私はみつるが来るまで少し離れた堤防で様子を見ることにした。
しばらくして、みつるが来た。
絹のような黒髪、川に似合わぬ雪のような透き通った肌。
枝のような細い腕が、瓶に向かって伸びているではないか。
やった…!
素直に嬉しかった。小瓶の中の手紙には、私の名前は書かなかった。
愛してる想いだけ伝わればいいかな、
と思ったからだ。
それに名前を書く勇気はさすがに無かった。
しかし、想いは今伝わろうとしている。
「バチャン!!!」
みつるが川に落ちた。
足首ほどの浅さだが、彼女は全身びしょ濡れだった。
助けに行かなきゃ、私のせいだ。
そっと静かに堤防から離れ、みつるの方へ向かった。
「みつる!大丈夫!?」
川を挟んだ向こう岸の彼女に声をかける。
真っ白なタオルから覗く顔は少し曇ってるように見えた。
「え、大丈夫だけど。」
「ちょっと今からそっち行く!!」
背中にみつるの声を感じながら私は走り出した。
自分の事しか考えて無かった。
想いを伝えて関係が崩れたらどうしよう
避けられたらどうしよう
学校で広まったらどうしよう
変な子だと思われるかな、
同性愛って他の人はどう思うのかな
そんな事しか考えて無かった。
一番辛いのは、相手《みつる》じゃないか。
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