第11話 小瓶の無い橋の下

 キーンコーンカーンコーン

 

 「さようなら」


 ガタガタと椅子の音や、会話が始まりざわつく中、私は鞄を取って駆け足で教室を飛び出す。


 行かなきゃ。


 川へ、川へ行かなきゃ。


 「みつるー?どこ行くの?」

 後ろからなつきの声がした。


 「ちょっと用事があって!先帰るね!」

 なつきはどこか寂しげな顔で微笑んでいるように見えた。

 「またね!みつる!」


 なつきに手を振り走る。走る。


 こんなに走ったのはいつ振りだろう。


 美術部だしな、運動しないからきつい。


 息を切らしながら、一生懸命足を踏み出す。

 「ハァ、ハァ…ハアッ着いた…!」

 

 いつもの川。

 いつもの橋。

 でも、一つだけ違うところがあった。

 小瓶が無い。

 "実際に会うから小瓶はいらない" 

 それを物語っているように思えた。


 実際に今日会うんだ…あなたと。

 私の事を愛している、と伝えてくれたあなたと。

 あなた…アナタ…貴方…誰なんだろう。

 

 頭の中にぽんっと出てきたのはやっぱり…。



 後ろに気配を感じた。


 「ねぇ。今、頭の中に誰を思い浮かべた?」


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る