第10話 願望

 ザァーーーーーーーー


 帰る頃、雨は激しさを増していた。


 なつきは体調不良で早退した。

 だから、帰りは一人だ。

 寂しい、そんな事は思わない。

 灰色の空に赤い花を咲かせる。

 こんな雨だろうと関係ない、真っ先にいつもの川へ向かう。

 もしも、"あなた"がみつるだったら?

 "私"は誰?  

 私は…私は…




 あなた《いしだくん》であって欲しい…。



 ただの願望。

 そんなの分かってる。

 でも、好きなんだ。胸が苦しくなるくらい、あなたのことが大好きなんだ。

 だから…だからいしだくんも私を好きでいて欲しい。

 最低だよね?我儘だよね?自己中だよね?

 でも…そう思う。

 自分のこの気持ちに薄々気付いていたけど、触れないように避けてきた。

 けれど、素直にならなきゃ。

 最近はそう思ってきた。

 

 濡れた階段をゆっくり下りて、橋の下へ行く。

 いつもの所に小瓶がある。

 私はそれをゆっくり手に取り、開けた。

 今回は一枚だ。

 

 「金曜日の放課後、ここで会いましょう。青峰美鶴さん。」


 




 

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