第8話 2枚の紙
「えっ、」
いつもの橋の下に、小瓶がまた置いてあった。
でも、いつもと違う点が一つ。
紙が2つ、折りたたんで入れられていたのだ。
いつものように小瓶を開け、逆さにする。
2つのかけらが、手のひらに落ちた。
1枚目…何も書かれていない。
続けてもう一つのかけらを広げる。
2枚目…は、書いてある…!
「まさか、お返事をくれるなんて…。
あなたは、私が誰か分かったらきっと驚くでしょう。
伝えたくて伝えたくて堪らない。
でも、伝えられない。
だって、私はあなたの事が好きなのだから。」
…。
「え?」
私は何度も何度も読み直した。
だって、私はあなたの事が好きなのだから…。
ダッテ、ワタシハアナタノコトガスキナノダカラ…
何回読んでも分からなかった。
その代わりに疑問が増えるばかり。
この小瓶は意図的に流されたものなのか。
"私"は誰なのか。
そもそも"あなた"は本当に私のこと…?
もう一つの疑問である、2枚目の紙は何に使うのか?
これは自分なりに解決した。
きっと、お返事用だ。
私はペンを手にとり、こう書く。
「あなたは誰?私は誰?」
橋の下から見えた空は、うっすら黒い雨雲が広がっていた。
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