第7話 予想外の訪問者
「ピピピピピッピピピピピッ…」
…はぁーーー。
「ピピピピピッピピピピピッピピピピピッピピピピピッピピピピピッピピピピピッ…」
…………。
「ピピピピピッピピピピピッ…」
目を閉じたまま、腕を伸ばす。
目覚し時計と思われる丸い物体の上部を叩くように押した。
「ふぁーーーー。」
りんごが入るんじゃないかってくらい、口を全開にしてあくびをする。
普通の家庭なら、目覚し時計がずっと鳴っていると誰かしら止めにくるだろう。
だが、私の家庭は違い、学生の私以外は全員仕事でいないのだ。
だから、こうして朝はのんびり、二度寝でもして…
「ピンポーーン」
…二度寝でもして、ゆっくりしてから学校へ行こうと思う。
落ちていたタオルケットを拾い、再び横になる。
二度寝は得した気がするから好きだ。
「ピンポーーン」
朝の日差しを浴びながら、ウトウトするひとときが幸せ。
「ピンポーーンピンポーーン」
寝ちゃダメだけど、起きたくない、あぁ気もち良いこの感覚。
「ピンポーーンピンポーーンピンポーーンピンポーーンピンポーーンピン…」
タオルケットを投げ捨て、私は部屋を飛び出す。
こんな朝早くにどこの誰ですか??デリカシー無いんですか??何のようですか??
玄関の扉を怒りと共に開け放つ。
「こんな朝に、何のよ…。え?」
今まで思っていた事が吹き飛んだ。
そこに立っていたのは、いしだくんだったからだ。
「え?どうしたの?」
きちんとアイロンをあてたワイシャツに黒い長ズボン、制服だ。
「……。」
いしだくんは何故か、私の問いに答えずもじもじしている。
「いしだくん…?」
目も合わせてくれない。
「おーーい、いしだくん何しに来たの?」
いしだくんは耳を真っ赤にしてぼそぼそ何か呟く。
「…っく……ろ、よ」
「え?何?聞こえない。」
いしだくんが思いきったように口を開く。
「服着ろよ!!」
「あ……、」
私は白いブラに、丈が短いショートパンツという格好をしていたのだ。
「いや、あの。これは、その、夏だからさ」
「そんな事いいから、服着て!」
「パタンッッ」
ドアを閉められた。
あぁ、情けない格好、薄い胸を見られてしまった、新たな黒歴史を…
そんな事を思いながら、歯を磨き、顔を洗い、制服に着替え、トーストを焼き、おにぎりを作る。
いしだくん、何しに来たのかなぁ。
おにぎりと少しのおかずを袋に入れ、鞄に荷物をつめる。
そしてトーストは口にはさみ、コーヒー牛乳片手に玄関を出る。
いしだくんは庭で座ってスマホをいじっていた。
「おわはせっ」
「トーストくわえて登校とか、漫画じゃあるまいし」
いしだくんの視線が非常に痛い。
「行くぞ。」
さり気なく鞄を持ってくれた。おかげで、口が開放された。
「ありがとう。」
しばらく、私の朝食タイム。
食べ終わったところでいしだくんに聞く。
「何で家知ってるの?何で迎えに来たの?何で鞄持ってくれるの?インターホンずっと鳴らしてお母さん出てきてたら…」
「ストップ!いっぺんにすんなよ。一つ一つ聞いてって。」
「まず、何で家知ってるの?」
いしだくんは長くなりそうだ、とでも思ったのか小さく溜め息をつき話し始める。
「この前一緒に帰った時言ってたから。ここ曲がったら家って。」
あぁ、あの時嘘ついてたら良かった、
「そうだったね、何で迎えに来た…来てくれたの?」
「一緒に登校するため。」
出た。太陽のような眩しい笑顔。
「ふーん、そうなの。じゃあ、何で鞄持ってくれてるの?」
私の興味無さそうな反応も気に止めず、誇らしそうに私の鞄を持ち上げる。
「何でって、持ちたくなったから」
…教科書どうりの反応
「おい、何でそんな真顔なんだよ」
「今の笑う所だった?」
「そういうことじゃなくて…」
「ごめん。じゃあ、最後の質問。」
いしだくんは困ったような笑顔で私を見て頷いた。
「インターホンあんなに押して、私じゃない人が出てきてたらどうした?」
「うーん、そうだな…」
…さっきまで気にならなかった蝉の鳴き声が五月蝿い。
「うーん、考えてなかった。」
お決まりの太陽スマイルで笑ういしだくん。彼らしい気もするが。
「もっとさ、窓に小石投げるとか、声出すとか無かった?」
「今どき、そんな事する奴滅多にいないでしょ。時代はインターホン。」
「うるさかったよ。」
「その事は謝る。てかさ、みつるちゃん考え方漫画チックだね。」
「ぅ、うるさいなぁ。」
考え方漫画チックなのかな。気をつけよう。
学校が見えてくると、いしだくんの友達らしき男子がたくさん集まってきた。
「おい、いしだ!なに女子と歩いてんだよ!!」
私はいしだくんから鞄を奪うようにとり、逃げるように裏の路地へ入った。
「いしだ、逃げられてやんの!」
「お前ら邪魔すんなよ〜」
「女子と登校してる方が悪い!」
いしだくんは何考えているのか知らないけれど、私といて得する事など何も無い。
現に勘違いされている。
でも、胸がモヤモヤするのも事実。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます