第5話 しみ
「青峰さん、あなた課題を何も出していませんよね?」
先生と2人きりの会議室ほど、学校で苦しい所はあるのだろうか。
「授業中も寝ているらしいし」
会議室にエアコンが付いていないのは、意外だった。
「体育も見学多いんですって?」
先生だけコーヒー、いいな。
「クラスにも馴染めていないし」
この椅子、カタカタする。
「青峰さん!?あなた聞いてるの?」
視界にファンデーションが厚く塗られているのに、しみがハッキリ分かる虚しい顔が全面に映しだされた。
「私は…。」
「なによ、ハッキリ大きい声で言いなさいよ。」
「私は、学校が嫌い、大嫌いです。」
大きい声は出していないが、先生は目を見開き、愕然としている。
「あ、あなた何を…」
「思った事を言っただけです。ごめんなさい。」
ゆっくり斜め45度を意識して礼をする。
「でも、学校が嫌いなのと課題を出さないこと、寝ること、見学することには関係無いじゃない?」
「学校が嫌いなので、やる気が出ないんです。」
「だからといって…」
「これからは気をつけます、すいませんでした。」
再び斜め45度を意識して礼をし、立ち上がる。
先生は何も言わない。
ただ呆然と私を見ている。
「あ、課題は放課後までに出します。」
次の瞬間。
「バジャッッ」
聞いたことの無い音、経験した事の無い、液体に殴られる感覚がした。
見なくても分かる。コーヒーだ。
顔に付いたコーヒーを拭い、恐る恐る目を開くと、先生が怒り心頭に発していた。
「好き勝手言ってんじゃないよ!!」
そう言い残し、先生はマグカップを持って会議室を立ち去る。
残されたコーヒーまみれの私。
5限もあるのにな、白セーラーだから目立つ。
会議室の床はというと、見事に濡れていない。コーヒーかけのプロですか、先生。
…ごめん、なつき。今日もジャージ借ります。
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