第9話 盃

「いいか?この先にいるのは圏外圏でいちばん恐ろしい男だ。くれぐれも失礼のねぇようにな」

『名瀬』が『オルガ』に念を押します。

 緊張の面持ちで『マクマード』の前に立つ『オルガ』達。

 意外にも柔らかい物腰で対応する『マクマード』に『名瀬』が切り出します。

「こいつらは大きなヤマが張れるヤツだ。オヤジ俺はこいつに盃をやりたいと思っている」

 まさかの盃を交わすと言い出す『名瀬』それも5分の…それは『名瀬』と対等ということです。

 さすがに6:4の盃となりましたが、なんと『マクマード』が見届人で義兄弟となる『名瀬』と『オルガ』

「俺の下で義兄弟の盃を交わせばいい。タービンズと鉄華団は晴れて兄弟分だ」

 とんとん拍子で話が進んでいきます。

 彼らの積み荷にも捌いてくれたようで『ビスケット』の想像を超えた値が付いたようで、資金面も安心でした。


 その頃『アミダ』は『アトラ』に男の選び方をレクチャーしていました。

「男の中にゃね、持ってる愛がやたら多いヤツがいる。その愛はたとえ多くの女に分配されても、普通の男の愛なんかよりずっとでかくて、心も体も芯の芯から満足出来るのさ」

『名瀬』は彼女にとってそういう男なのでしょう。


 その頃『マクギリス』と『ガエリオ』は『鉄華団』を追うために裏で手を回しているようです。

『アイン』は『ガエリオ』の部下となったようで、まさに運気は低下しているのです。


『マクマード』の元に残った『クーデリア』護衛に『三日月』が付いてますが彼は彼女に別の話があったのです。

「火星のハーフメタル資源の規制解除を要求。火星での独自流通を実現するため地球くんだりまで出向く。そいつで間違いないな?」

 その実現の可能性がある。

 それは利権争いで長い戦争を覚悟しなければならない決断だと『クーデリア』に話します。

「お嬢さん、ここはテイワズを指名しちゃくれないか?」

 考える時間が欲しいという『クーデリア』に『三日月』が口を挟みます。

「これは多分俺が最初に人を殺したときと同じ。クーデリアのこれからの全部を決めるような決断だ。だからこれはクーデリアが自分で決めなくちゃいけないんだ」

 彼女がやろうとしていることは人の屍の上に成り立つことだと『三日月』は理解していました。

 そんな『三日月』を気に入ったのか『バルバトス』の面倒をみようと言い出します。


 戻った『オルガ』は年少組にお土産を買ってきました。

 お菓子のやま。

 そして年長組は酒場へ繰り出します。

 上に立つものとしての『名瀬』からのアドバイスなのです。

「やっとだ…やっと家族がつくってやれる、お前らにも、やっと胸を張って帰れる場所」

『クーデリア』は『フミタン』に『マクマード』の件を相談しました。

「わかってたの。でも認める勇気が無かった。ごめんね、いつもありがとう、フミタン」

 答えはでてたのです、覚悟が無かっただけ…。

『クーデリア』が『フミタン』へ差し出した、お揃いのネックレスを前に沈んだ面持ちの『フミタン』


 そして盃を交わす日

 揃いの羽織に『鉄華団』のマーク。

 自ら筆をとって『オルガ』の名に漢字を当てていく『名瀬』

「変わった画だね」

「字だよ」

『三日月』には画に見えたようです。

御留我威都華オルガイツカ」暴走族の当て字のようです。

 自分の名も書いてもらった『三日月』

三日月王我主ミカヅキオーガス

 和装の『オルガ』に自分の名を見せる『三日月』

「同じ字が入っている」

『我』

「自分って意味さ。これからどんどん立場だって変わる。自分を見失うなよオルガ。でねぇと家族を守れねぇぞ」

『名瀬』の言葉の重さを彼はこれから幾度も知ることになるのです。


『マクマード』の前に『クーデリア』

「私の手は既に血にまみれています」

 完遂できなければ、その『鉄華団』に顔向けできない。

 そう今の彼女は『鉄華団』の屍のうえにあるのです。

 後ろに立つ『オルガ』に確認をとる『マクマード』このあたりは子分でも筋は通す。

 仕事を『テイワズ』に持って行かれるわけですが、『オルガ』の面子を考えてくれている『マクマード』

「俺のメンツなんて関係ないです。これから何があっても俺らが変わることはない。俺ら一人一人が鉄華団のことを考えていく。守っていく」


 こうして無事、ヤクザとなった『鉄華団』の巻でした。

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