第7話 最適な時間の戻し方

この世界は間違ってる。

たった一人の女の子すら救えない世界は、なんのためにあるんだ?


彼女を救えないこんな力になんの意味がある?

俺はこんな力なんていらなかった。


昨日を変える力なんていらないから、

そんな力なんていらないから、ただ、彼女と笑える明日が欲しかった。


彼女が消えてから何時間も経って、あたりもすっかり暗くなったのに、俺は一歩動くことができずにいた。


真っ暗な海辺に独り。

彼女がいなくても大丈夫なんて、嘘だ。

彼女がいなきゃ、俺は歩くことすらできない。


こんな世界ならいっそ壊してくれればいいんだ。


俺が死ぬしかない。

結局いくら考えても、それしか思い浮かばなかった。

彼女は駄目って言ったけど、それでも俺にはそれしかない。


俺のこんな使えない能力を、唯一役立てるにはそれしかないんだ。


空を見上げると、北斗七星がひときわ輝いていた。

そうだ、あの魁星に誓おう。


たとえ彼女を裏切ることになったとしても、それでも俺は彼女を救うと。


彼女を少しでも思い出そうと、彼女が残していった干しみかんを手に取った。


それで、俺はやっと気づいた。

ああそうか、俺はずっと勘違いをしていた。

つくづく俺はバカだな。


結局悩む必要なんてなかった。

俺はきっとこのために生まれてきたんだ。

この時のために、この忌まわしい力を持って生まれてきた。


恥ずかしげもなく言うなら、

俺は彼女のために生まれてきたんだ。

俺はいままでずっと、間違って力を使ってた。

今回初めて、正しく力を使おう。

これが、最適な時間の戻し方だ。


俺の願いはただ一つ彼女を救うこと、それだけ。たった一つの願いくらい叶えてしまおう。

今日の日をいつか思い出したときに後悔しないように、そのために……


この身をかけてでも。


手に力を入れ、決意を込めてみかんをかじると、渇いた喉に果汁が染み渡った。

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