Lesson04「遊び」
アゴン《競争》、アレア《偶然》、ミミクリ《模倣》、イリンクス《眩暈》――、世には様々な”お遊び”が存在するが。
ここで気に掛けるべきはミミクリ、模倣である。
もちろん、出来るというのなら彼らとかけっこをし、サイコロに興じ、坂下りや肝試しをするのを止めはしない。
それらに付き合ったあと、彼らがあなたのもとから「音楽性の違い」などと言葉を濁して去るのは目に見えているが、マイスターは自由意志を尊重しよう。
ともあれミミクリ《模倣》である。
彼らが幼い頃から兄弟でじゃれあっているのは「喧嘩ごっこ」であり、じゃらしで行うのは「狩りごっこ」である。
先に述べた噛みつきからの遊びスタートは「喧嘩ごっこ」を求めてのものであるから、まずは噛まれた手にじゃれつかせるのも良いだろう。
手のひらで顔を覆い、軽く揉むように弄ったらサッと逃げる。腕ごとぐいっと押し付け攻撃させる。手は尊い犠牲だ。
この時、喧嘩ごっこなので彼らも怒ったふりをしてくる。ふり、である。
向こうもそのつもりなのだから、噛みつかれたと叱っても「怒ったふりうまい!」と盛り上がるだけで、当然まったく躾のような効果は得られず、そのまま叱り続ければ望まぬ結末を迎えることになるだろう。
そして毎度自らの手を捧げていては身が持たないのも悲しい事実だ。彼らにその気がなくとも牙や爪により幾多の戦功が残され、勲章として誇るには少々目立つ。
さぁ、じゃらしを手に取るのだ。それこそは文明の利器であり、人類の叡智に他ならない。
あなたの好みで手に入れた「鼠」「虫」「鳥」のいずれかが、彼らの好みに合うかは試してみなければわからないが、入手したじゃらしがどのタイプかをよく観察してみよう。
持ち手から紐が伸び、紐の先に毛玉が付いているなら「鼠」
持ち手からの棒状でよくしなり、先端が短い毛に覆われているなら「虫」
持ち手から紐が伸び、紐の先に羽やひらひらがついていれば「鳥」
これらで肝要なのは「形」よりも「動き」である。
どれもこれも、動かした時に見栄えが良いようになっているわけだ。
「鼠」なら、通路の隅や物陰をちょろちょろ、あるいはサッと動き、ピタリと止まる。その動きが毛玉なら見分けやすく興味をひく。
「虫」なら、毛布やかぶせものを持ち手の軸でもぞもぞと動かし、更に少しだけ顔を見せてすぐに隠れるといった動きが良い。虫のもぞもぞと、蛇などの顔を出して隠れるの複合なのもあって人気が高い。
「鳥」なら、通路の真ん中や床に落とし、もがくように暴れさせ、少し飛んで落とす。そして捕まりそうになったら大きく飛んで落ちる。怪我をした鳥をイメージするとやりやすい。
この動きを意識してあとは駆け引きをしてやれば彼らは大興奮である。
その心をがっちり掴み、満足させるほどの奉仕が出来たなら、次からは怒ったふりであちらから誘ってくるほどハマってくれ……。同時にそこまでいくともふりより”遊びの関係”で終わってしまうのだが。
今ではじゃらしの種類が大幅に増えたが、大事なのは「動き」を意識し、単調にならないよう「駆け引き」を楽しむことだ。
幼い彼らが一人遊び用の遊具で満足しなくなるように、同じ動きを機械的にすれば飽きられ、またあなた自身つまらなくなり、彼らも楽しめなくなってしまう。
たかが遊びに労力をかけたくない、そう思った瞬間あなたは見限られ、みすみすもふりへの道を閉ざしてしまうことだろう。
彼らとより良い関係を築き、一人でも多くのもふりマイスターが生まれることを願おう。
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