Lesson02「一般飼育」

 だらんと横になり、無警戒に横腹を晒すのが良い。

 人に慣れており、触れることは造作もなく、何の達成感もない。だが毛並みに貴賤なし。


 まず、匂いを嗅ぐ仕草を感じたらステイだ。ただただその身を任せ、全てを捧げよ。

 何か匂いや味が染みついている場合、ざらざらとした舌を持って確認されるかもしれない。

 その時に必要以上の快楽を感じたのならこの本を閉じてくれ。

 個人的趣味に干渉する気はないが、さりとて我が矜持を語る相手としてフェチズムの差は許容できない。

 毛並みこそが至高なのだ。


 さて、ここでは毛足の短いしなやかなものものが狙い目だ。

 それらは野良では滲み出る野生によって生き様が刻まれており、ここで出会える彼らとの違いを堪能できる。


 なに? 慣れたと思ったら噛まれた?

 彼らがその気になっていれば、間違いなく流血沙汰である。そうでないのならそれは遊んで欲しい合図だ。

 それに対して手を上げたり、反応した時点で「遊んであげる」と公言しているも同義。相手は興奮が増すだけである。

 そうなってしまえば、しばしもふりは諦め、彼らが満足いくよう尽くす。これも普段得難い至福を得るためのこと。


 間違っても理解ない主のように叱ったり、叩いたりしてはいけない。

 それで彼らが大人しくなった場合、それは躾ではなく信頼を裏切り「仲間ではない相手」と認識された結果である。


 では誠心誠意向き合う覚悟を決めたなら、その方法について触れておこう。

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