第六十四話『スキルは使い方』
「はい、私の勝ち!」
と、リオンはナイフの柄を僕の胸にタッチさせた。
そして、リオンは微笑んだ。
そう、その向きが逆だったら、僕はやられていた。
「なるほど、そういう弱点があるのね!」
と、ニコは一連の動きを見て納得していた。
ニコは、ボールがリオンに当たらず、僕が盾から顔を出して、やられるところまでを一部始終横から見ていた。
「誘導できる条件があるのね!」
とニコが言う。
ニコは、僕の投げたゴムボールが、リオンに当たらなかった理由をそう理解した。
彼女の位置からは、二人がしっかり見えていたし、ボールの軌道も良く見えていた。
「そう、この『追尾投擲 - ホーミングスロー』は、狙ったものをどこまででも追いかけてくれる・・・というわけではないんだ」
「うん、その、誘導半径を抜ければ当たらない」
とリオンが言う。
そう、『追尾投擲 - ホーミングスロー』には誘導半径が存在し、ある程度離れてしまうと、追尾できなくなってしまうのだった。
さっきの、実験は、そういうものだったのだ。
僕が上空に『追尾投擲 - ホーミングスロー』で投げたゴムのボールは、本来ならば、誘導されて『リオンに当たる』はずだった!
実際にはそうはならず、『追尾投擲 - ホーミングスロー』をリオンは綺麗に避け、僕の所に到達していた。
「そっか、もうその時には、リオンは誘導半径にいなかったのね」とニコが言う。
そう、リオンは『追尾投擲 - ホーミングスロー』が自分を追う前に『高速移動 - アクセル』を使って、その誘導半径外に出ていた。もっと言うと、それどころかすでに、盾のところまで来ていた。
そして、『追尾投擲 - ホーミングスロー』は的であるリオンを探せずに地面にポーンと落ちていった。
「そして、このコンビネーション『土盾 - マッドシールド』と『追尾投擲 - ホーミングスロー』のもう一つの弱点が・・・」
と、そこまでいったところで、ヒカルが続きを言った。
「盾が邪魔で、相手が見えないのね」
「そう、壁で、相手の遠隔攻撃が当たらないというメリットと引き換えに、こちらからも相手が見えないというデメリットがある」
と僕も補足する。
「キングゴーレムとかみたいに、ゆっくりな相手だったら、いいけど、リオンちゃんみたいに、超高速で動いてくる相手には、弱点になる可能性があるのね!おもしろいなー」
と、ヒカルがうんうん頷いている。
無敵に見えた『土盾 - マッドシールド』と『追尾投擲 - ホーミングスロー』の組み合わせも、相手によっては弱点になってしまう可能性がある。
それがスキル戦の面白いところだ。
「スキルは使い方が大事」
とリオンが言う。
「そう、無敵のスキルがあるんじゃなくて、使い方が重要なんだ!」
と僕は言った。
「なるほどねー!タカシはポンポンポンよく思いつくわね!」
とニコは笑った。
僕は体力の無さをそこで補っていくのだ。
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