第五十六話『パン屋さん』

「さ、パン屋さんに行くわよ!!」

とニコが言う。

その言葉を聞いて、パン屋さんか、それはいいな、思った。


僕の家こと、学校を出て、お店が並ぶ通りにやってきた。

歩いていると、皆がこちらを見ている。


「お、ニコちゃんデート!?」

などと、果物屋さんなどの店員さんなどに、声をかけられていた。


彼女達は、街を守っているので、いわゆる有名人なのだろう。そして、小さい街なこともあって、進むたびに声をかけられていた、おばちゃん、おじさん、子ども達に。


「ついたわよ!」

と、ニコが案内してくれた。


そこはちいさなパン屋さん。

若い夫婦で経営しているようだ。

白いずきんを被った若い奥さんがテキパキと動いて、パンを並べている。奥では旦那さんが、パンを焼いている。


こんにちわー、と軽く挨拶をして、パンを選ぶニコ。

「これと、これと、これ、あと紅茶2つね!タカシはどれがいい?」

とニコが聞く。

彼女はなんか可愛らしい甘いパンを幾つか選んでいた。


「うーん、僕は甘いのは、いいかな、しょっぱいやつ」

と卵とハムが挟まっているものを頼んだ。


「あ、それもいいわね!」

とニコは微笑んだ。


ごはんを選んでいるときの彼女はとても楽しそうだ。

その笑顔を見ていて、悪い気はしない。


僕らはそれらの会計を済ませ、お店に隣接する外の席に座った。


テラス席というのだろうか。元いた世界では、オシャレ過ぎてとても座ったことがない席だ。ニコがここにしましょうと、僕を連れてきた。


「うん、なかなか、おいしいね!」

と僕は、自分で選んだ卵とハムのパンを食べながら言った。

そして、温かい紅茶をゆっくりと飲む。


「そうでしょ!」

と顔をぱぁっと明るくする。ニコ。


いつもより笑顔が眩しい。

なんとなくそんな気がして、改めて、ニコの全体を見る。

そして気がついた。


「あれ?服もいつもより、かわいい?」

と僕は、その時やっと気がついた。


もしかして、化粧とかもしているのかな?

いつもより女の子らしく見える。


「えー!やっと気がついたの??タカシはだめねぇ」

と、肩を落としながら、ゆっくりと首を振る。


でも、その顔には笑みが浮かんでいた。

気がついてくれた・・・。

とぼそっと言っように聞こえた。


「ん?」

と聞き返す。


「なんでもないわよ!バカ!」

とニコが言う。


「バカとはなんだバカとは!」

と僕も笑った。


いつもは、戦闘や訓練があるので、かなり動きやすいシンプルな服装だが、今日は、そのどちらもないので、女の子らしい、ふわっとした服装なのだった。


「訓練用のかっこしか見たことなかったから、ああいうのが好きなのかと思ってたよ」

と僕は笑った。


「バカ!そんなわけないじゃない!もちろん、動きやすい服も好きよ!こういうかわいいのも!つまりどちらも好きね!」

と微笑む。


「女の子なんだなー!」

と僕は言う。


「何言ってるの!なんだと思ってたのよ!」

と、いつもより可愛らしい服に包まれたニコは微笑んだ。


「悪くないね」

と、僕も笑った。

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