第八話『二重炎拳 - フレイムパンチの威力』

「あ、やっぱり連射はできないのね。ある程度の時間置かないと撃つことができないんだわ」

彼女は『炎弾 - ファイヤーバレット』の特性を理解しはじめたようだ。


「なかなかおもしろいわね!」

と、ニコは笑った。

彼女は、その特性を理解した上で新たな使い方を模索しているようだ。彼女は剣士なので、あくまで、サブとして使うのだろう。


まず、二回目が打てるようになる間は剣で戦う、というような方法が考えられるし、わざと外して、避けた所を斬りかかるなど、もできるはずだ。


彼女はかなり戦術の幅が広がったようで

目をキラキラ輝かせている。


「僕も試してみよう!」

と言って、サンドバッグのように埋めてある、丸太の前に立った。そう、僕の方も、新たなスキルを手に入れたのだった。


『二重炎拳 - フレイムパンチ』、これは『炎拳 - ファイヤーパンチ』を2つ重ねたものだ。

最近だと、ソーシャルゲームで、同じカードを重ねて、キャラが色違いになったり、なぜか露出があがったりして、パワーアッブする。という概念が一般的になりつつあるので、こういうこともできるんじゃないかと思っていたのだ。


そして、試したら、やっぱり出来た。

運が良かったといえる。この世界と相性がよかったのだ。

そして、そのスキルを使ってみる。


『二重炎拳 - フレイムパンチ』


とスキルを発動する。


燃えさかる右腕。

不思議と僕自身の右腕は熱くない。


何らかの耐熱処理がされているのだろうか。

もしくは、右手はこの瞬間だけ無敵時間なのかもしれない。

と考えたが答えはわからなそうなので気にせず、実際に使ってみることにした。


そして、丸太に向かってパンチを撃つ。

ところがこれがうまくいかない。

ヒットの瞬間に、ブレーキをかけてしまった。


何かの心理的ブレーキなのだと思う。


そういえば、帰宅部だし、格闘系の事をやったことがないので、何かを殴ること自体がそもそも初めてなのだ。そのためかパンチを打ちぬけず、途中で、ブレーキをかけてしまった。


サンドバッグでこの状態ということは、人を殴る、というのはよほど訓練していないと出来ない感じがする。

現代人は人を殴るようにできていない・・・。


そうして、パンチをしっかりと最後まで打ちぬけなかったのだが、しっかりと、丸太のサンドバッグは破壊された。

炎の威力が僕のパンチ力を凌駕していたのだ。ちゃんと打ち抜ければもっと攻撃力があがるのだろう。


ところで、サンドバッグって、砂のバッグという意味だろうからほんとはウッドバッグだろうけど良くわからなくなるのでここは、木のサンドバッグということにしておこう。と関係ないことを思った。


「わ!タカシ!凄いじやない!」

と、破壊音を聞いてこちらを見たのか、ニコが言った。


「でも、パンチはへっぴり腰ね!」

とニコは笑った。つまり、最初から見てたみたいだ


「お恥ずかしい!」

と僕も笑った。いままで、何かを殴るなんてしたことなかった。でも、この世界だとそうも言っていられないだろう。


と、いったやりとりをニコと僕がしていると、建物から、二人が出てきて近づいてきた。


「なんだね、なんだね!騒がしいよ、ニコ」

「ニコ、うるさい・・・」

と言いながら美少女が二人、やってきた。

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