第89話 おいらにサンタは来なかった

 やあ、おいらです。


 おいらは祈ったのです。

「サンタクロースさま、おいらに『このミステリーがすごい』と泡坂妻夫さんの復刊三冊をちょうだいませませ」

 クリスマスイブは六時半に寝ました。その枕元には大きな靴下。でも本四冊も入るかな? ちょっと心配しましたが、睡眠薬の引き起こす睡魔に勝てず、眠りました。


 翌朝、目覚めるとおいらは、靴下にロックオンしました。残念ながら中身は空っぽで、こともあろうか、ねこのゲー(吐瀉物)が満遍なく引っかかっておりました。


 おいらはサンタクロースに文句を言いました。すると、

「この一年で最大の繁忙期にちまちま本を買っている暇なんかあるか!」

と怒られました。サンタクロース、つまりおいらのツレには本を買ってくる余裕がないのでした。ツレの勤めるY書店のH王子店は広くて、売れる店なのに、書籍の社員がツレ一人しかいません。だからいつも、朝早く行って、終電で帰ってきます。もちろんサービス残業です。どなたか、このことを労働基準局に密告していただけませんか? Y書店は社員の命を削っています。みんなメンタルをやられて、本店や、横浜駅西口店はメンタルの野戦病院のようだと、人づてに聞きました。


 社員やバイトを大切にしない会社はいずれ淘汰されるでしょう。ツレが定年になって、退職金をもらったら、潰れてしまえ。おいらの呪いです。


 話変わって、横浜駅西口のダイエーにあった、あおい書店がいつの間にやらブックファーストに変わっていました。書店盛衰記という感じですな。気付いた日は用事があって店を覗けなかったのですが、あおい書店の開店直後みたいに文庫本がこれでもか! というくらいにあるんですかね。当分、横浜に行く予定はないので、確かめようがありません。

 横浜線中山駅の住吉書房が閉店したことは前に書いたのですが、覚えておいででしょうか? 別に覚えていなくてもいいですよ。これで、小机、鴨居、中山と町の本屋の砂漠化が進んでいると思ったのですが、中山駅の北口の東急ストアに文教堂がありました。えっ? ららぽーと横浜に紀伊国屋書店があるだろうって! だって駅からららぽーと横浜に行くの遠いんだもの。あれは駅前の書店とは申せません。


 町の個人経営の書店って軒並み潰れていますね。多分、取次が、売れない本ばっかり、新刊で入れてきて、売れ筋は大資本の大手に集中して配本しているのでしょう。ああ、おいら本屋をやりたいな。それも日本のミステリーに特化した新刊文庫と古本を合わせて、カフェも併設したこじんまりとした店。なんてね。できるわけないよ。金がない。クラウドファウンディングでしたっけ? お金、集めるやつ。仕組みに詳しい方、ご教授願います。

 またもや、現実放棄。たぶん、来年早々、おいらは清掃員になるでしょう。ハローワークのおっさんはおいらにイライラしている感じだし、正直、おいらも自分にあってそうな仕事がなくてイラついています。


 マジ、宝くじ当たんないかな。買ったのはツレだけど……


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