第87話 はあ、眠れない

 やあ、おいらです。


 久々に、眠れないんです。アルコールも入っているし、睡眠薬もしっかり飲んだんだけどなあ。


「それなら、あたしの出番じゃないの!」


 ああ、舞子かあ。久しぶりだね。


「相当なご無沙汰よ」


 そうだね。でも、君はもう用無しだよ。カクヨムコン3に君が主演の『女優』を投稿したけれど、箸にも棒にもかからない。


「それはそうよ。あの作品、いつ書いたんだっけ?」


 春だったかなあ。


「もうとっくに、旬を過ぎているわ」


 でも、オチの部分は変えたんだよ。


「その程度じゃ、ダメね。それに、完結した小説を一気に載せちゃうと、読者の目に入る機会がないから、よっぽどスコップしてくれる人でなくては見てくれないわ。露出不足よ」


 そうだね。去年のカクヨムコン2では、いろいろ策を練って、頑張ったんだけどねえ。今年はいまいちやる気が出ない。


「どうして?」


 人生の先が読めない。


「大きく出たわね」


 もうさあ、どうでもいいんだよ。これから先、世界の偉人として、道徳の教科書に出たり、ノーベル賞取ったりすることなんかないもんね。


「ますます大きく出たわね」


 宝くじ、当たんないかな? 買ってないけど。ああ、トトビックは毎週3口買っているよ。でも当たんないね。


「あなたに、大金もたせたらろくなことしないて、神様は思っているんじゃない?」


 僕はお不動様を信仰しているんだ。神様じゃなくて仏様だよ。


「どっちだって、構わないわよ。あなたは神様にも、仏様にも愛されていないの」


 そうだね。それはひしひしと感じてるよ。このところ、ろくなことがない。


「今日、いえ昨日も大変だったみたいね」


 ああ、三ヶ月ぶりに老父から、呼びつけられて行ったわけさ。実家に。お歳暮にもらった食べ物が食いきれないから取りに来いってさ。


「よかったじゃないの」


 まあ、それはいいんだけど。これは前にもどこかで話したけれど、誰も覚えてないと思うからまた書くね。老父は俳句に凝っていて、なんとかって言う結社に入るくらいのめり込んでいるんだ。でも、おいらときたら俳句なんてハの字も興味がない。歯なしのぺこりさんだからね。そんでもって、老父はおいらに俳句をやらせたくて、いろいろ話しかけてくるんだけども、おいら、ちんぷんかんぷん。でも、無視するのは親不孝だから、ウンウンと、とりあえずうなずいてやるんだ。この時間が超苦痛。あー、お布団に入って本でも読みたいなあって考えるのさ。


「それが、あなたのできる、唯一の親孝行なのよ。我慢しなさい」


 おいら、親子の情とか家族愛とか持っていないと思うんだ。


「薄情なのね」


 そうかもしれない。否定はしないよ。


「これからも、ロクでもない人生を送るのね」


 うーん、それも否定できない。


「せめて、自分の創った、キャラクターぐらい大事にしてよ」


 そうだね。でも、舞子の出番はもうないかな?


「どうして?」


 君を活かす、アイデアが浮かばない。せいぜい『横浜マリンズの栄光』が再開できたら、始球式にでも出してやるか。


「もう書く気ないんでしょ?」


 今はね。


「前回はポジティブだったけど、今回はネガティブね」


 それが、おいらの業病だ。しかし、眠くならない。


「無理に寝ることないわよ」


 そうだね。鯨統一郎さんの本でも読むか。


「くだらないって言っていたのに」


 買った以上は読まなきゃもったいない。あと万能鑑定士Qなんていうのもあるんだよね。これも、絵のない漫画だよ。それに、大事にとってある北森鴻さんのご本が二冊あるんだよねえ。脳の調子がいいときに読むんだ。楽しみ。


「能天気なおっさんだわ。今日はこれでおしまい。お相手は水沢舞子でした。またお会いできることを楽しみにしています。ぺこりさん次第ですけどね」

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る