第65話 今宵が最後の夜だとしても……

 やあ、おいらです。


 みなさん、最後の晩餐は済みましたか? 大切な人と逢いましたか? 長距離で無理な方は電話しましたか? メールは? LINEは? 今日が最後の日

なんですよ! 何グズグズしているんですか。早く、早く。


 ノースコリアの気狂いお坊ちゃんが「今日は建国記念日だ。グアムにICBM撃っちゃおうぜ。マンセー」なんて言って朝からミサイルを発射するんですよ。それも日本の上空を通過して。THAADミサイルなんてなんの役にも立ちませんよ。仮に命中しても、搭載された核弾頭はどうなるんですか? それが陸地に落ちたりしたら? また日本は被爆国ですか? 何度痛い目に遭えばいいんだろう。


 それに対して、アメリカの、未だに閣僚が揃わず、カツラ疑惑も払拭できない、スランプ大統領は「クソガキ、やりやがったな。最強の軍隊、アメリカ軍の総攻撃だ」とB1爆撃機で平壌を攻撃するでしょう。そうすると、影のゴク悪人、プーちゃん大統領と、周富徳主席が「アメリカが核を使った。我々はノースコリアをまもるため、アメリカに核爆弾を撃つ」と言って核のボタンを押すでしょう。なぜか他の核保有国もボタンを押すでしょう。みんなこう思っているんです。「こんなヤリキレナイ世界は無くなってしまうがいい」


 決して捕まえることのできない花火のように、世界中から核弾道ミサイルが発射され、地球の人類はほぼ、滅亡するのでした。


 なのにおいらは生きている。死にたい死にたいと思っているおいらが生き残り、なんの罪のない世界中の人々が亡くなってしまった。

 地球上は放射能にあふれている。おいらは長袖の服を着て、手袋をし、口にはマスク、目にはハズキルーペをし、ベイスターズのキャップを頭にタオルを乗せてから被った。

 目的は大型商業施設らららーら横浜。狙いは食料品の強奪だ。だが、目論見は外れた。らららーら横浜は完全に崩壊していた。食料品どころかナクドナルドもない。絶望したおいらは鴨居大橋から鶴見川に飛び降りようとした。誰も止めてくれやしない。おいらは落下した。そしておいらは死んだ。死んだはずだ。死んだんじゃないかな? まあ、ちょっと覚悟はしておけ。と、さだまさしが歌っている。

 おいらは大声で叫んだ。

「おいらは死んでますかあー」

 すると答えが返ってきた。

「半死半生でーす」

 女の声だった。

「半死半生?」

「ええ、もうすぐ、溺死します」

「そうか……こんな核汚染された地球で生きることもないか。生まれ変わって鳥にでもなろう」

「転生にご興味がおありですか?」

「ああ。ところできみ、誰?」

「私は『転生法人 ネクストワールド』のプリンと言います。川の中なので名刺は後ほどお渡しします」

「あそう、プリンちゃん。キャバクラみたいだね」

「本名なんです」

「ご両親は何を考えていたのかね?」

「父が、カラメル。母がカスタードと言います」

「運命だね。それより、おいらは鳥になれるのかね?」

「はい。しかし、とりあえずは人間でいることをお薦めします」

「なんで?」

「転生でお連れする場所の住民が地球人の千分の一のポテンシャルしか持っていないんです。あなたはヒーローになれます」

「ふーん。じゃあ、一口乗るか」

「ありがとうございます」

 おいらは異世界へ疎開することになった。

     

〜気が向いたら、後編に続く〜

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