19、ごろ太のはなし

 という男は菓子屋で売れ残った饅頭などを安く買って来てその中身のを再び煮て、葛粉をまぜてつくった羊羹ようかんを寺社の盛り場で売っていた小商人でしたが、ある年の盆過ぎから様子がおかしくなって、ある人が見たということには、夕暮れおそくに薄暗い物かげでもくもくといたちのようなけだものをかじって食べてるのを見た、というはなしもあったといいます。


 といっしょに小さい頃、湯屋に行ったことがあったと語る者によると、乳が六つあり、腰からは毛のない尾のようなものが生えてたのを見たともいいます。


 日頃まわって歩いていた菓子屋にの姿がぷつりと糸が切れたように見えなくなってから数か月のあいだ、そんな噂が出たと耳にしました。

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