8、大うつぼのはなし
とても大きいものだというはなしであるから船に覆いかぶさったり、当たって来たりするのだろうかと思っていましたが、聴いてみると、そのようなはなしは全く無いんだそうです。
七十年ほど前、
太六は
「おまえのほうこそ誰だ」
「わしは、この沖をあずかっているものだ。
そう言うと、うつぼは深々と頭をまた下げるのでした。
船が戻れずに難儀をしているとの太六のことばを受けたうつぼは、彼の船を背に乗せてすいすいと走り、あっというまに船番所のあたりまで運んで来てくれました。
「これはたのもしい」
と、海の上を走る太六は安心をしていましたが、うつぼは太六の船を海面におろすと、下げた頭を
「親王さまをお届け出来たのは名誉なことだ、何か仲間に誇れるくだされものをお授け下され」
潮にもまれたときに荷をすべて失ってしまっていた太六は弱ってしまいましたが、むげに断って船ごと呑み込まれてしまっては身のおわりなので、羽織ってた
匠野の太六が着ていた褞袍には
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