No.1 随意転送

「よく来たな勇者ササキよ!!お主は晴れてこの【ギルネー王国】の勇者に選ばれた!」


突然俺がふわっと宙に浮かんだと思ったら、中世風のレイヤージジイが目の前にいるではないか!!

「何だこれ……夢か?」

「残念だったな、現実だ」

うわすっげぇ!胸板の凄く厚い鎧姿の中年がいるぞ!?え、ちょっと待ってよ。



「……アンタ、格好良かっけえな」

「う、五月蠅い!!」



あれ、今何か照れてた?

もしかしてこの人そっちの気とかあるのか?


「初めてだな。私はベルフェスティオ。

この【ギルネー王国】随一の重臣」

「初めまして、俺は佐々木です」

「私は貴様を認めんぞ!!絶対に!!」


ベルフェスティオはいきなり怒鳴った。

胸板の圧力が、凄い…………!!


「早速ぢゃが、お主に頼みがあっての。

――――この図鑑を埋める事を命ずる!」


そう言うと王は、ライトノベル一冊分くらいの本を手元に出現させた。


「儂の能力【随意転送】は、お主らの世界で言うところのテレポーテーションぢゃ。

勇者の使命はこの図鑑を埋め、儂らの世界を救うことなのぢゃ」


俺はあまりの急展開に頭が追い付かない。

そんな俺を見兼ねてか、ベルフェスティオは王の発言に補足していく。

「実はこの能力を悪用する輩がいてな。

そいつらに能力を奪われぬよう生み出されたのがこの図鑑だ。

見た事のある能力に封印を掛ける事が出来る為、これで全ての能力者に会えば」


「能力を守る事が出来る……!!」


俺が理解出来たのを見てか、王は俺にいよいよ命を下した。


「さあ行くのぢゃ勇者よ!!

時間が無いのぢゃからな!!」


「……仰せのままに」


腑に落ちなかったが、仕方ない。

帰る手立ても探しつつ、今は旅立つよりないみたいだ。


こうして俺は【チート図鑑(俺命名)】を埋める旅に出る事になった。

でもまさか、あんな事になるとはその時、まだ解るはずもなかった…………。

(No.2に続く)

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