第3話 祐喜人の秘密
――しばらくの後、私と祐喜人は付き合うまでの関係になった。
少し、祐喜人のいいように動かされ過ぎでは? という懸念はあったものの、私は冒険がしてみたかった。デートでの彼のエスコートは完璧だった。祐喜人といることで、自分の中で何かが目覚めた。こんなに楽しい時間は生まれて初めてで、時間が止まればいいと思う瞬間ばかりだった。
「次は水山駅で待ち合わせようか。静子さんも便利だし」
あれ? と思ったのは、それが最初ではなかった。
水山駅は私のよく使う駅ではない。というか、祐喜人と最寄り駅の話をしたことが、あったかな?
私は気になって、祐喜人のことをネットで検索してみることにした。
すると……数行目にあったリンクを辿って着いたのは、
『非モテ ユッキーの女なんていらないさ日記!』
これはまた卑屈なモノが出て来たな。
しかし。あの穏やかで自信家の祐喜人がこんなの書くわけないよねぇ、
と思いつつ少し読んでみたらこの日記、メールと文体が似ているし趣味も少ーし近いかも?
いやいや待て待て……
「せかせかするのが嫌いだから、動作をわざとゆっくりにして余裕があるように見せかけるようにした(笑)知的に見えるように眼鏡もかける」
ハッ、いつもの余裕しゃくしゃく営業じみた態度は、あれは見せかけだったのか……?!
間違いない、祐喜人=ユッキーだ……!
彼のユッキーとしての真の姿を知った私は幻滅はしなかった。むしろ、ますます興味と親近感を覚えてやまなかった。
「ここの神社は、弁天様が祀られていてカップルの聖地とされている。でも、本当は嫉妬した弁天様に二人が引き裂かれる破局スポットなのだ! リア充ざまあ(笑)」
う、うーん、こんなことを思う人だったのかー。
そして、最後の更新のタイトルは『読者よごめん!最高の彼女が出来ちゃった』だった。
そっかー私かぁ。ニヤニヤ。
内容は彼女出来たから日記やめるしこれからはデートを楽しむという宣言だった。
「この子とずっと一緒にいたい。この気分がずっと続きますように!」
私も同じ気分だよ、と思ってその日記の日付を見る、と……。
私と出会った半年前の日付、だった。
私、じゃない。心がこおる。
祐喜人は、半年前に私じゃない誰かと、付き合っていた――。
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