なめくぢの肌ぬらしたる月夜かな

【読み】

 なめくぢのはだぬらしたるつきよかな


【季語】

 なめくぢ(夏)


【語釈】

 月夜――「月や月の光。また、月のあかるい夜。月の照りわたった夜。あるいは月の光に照らし出された夜の景色なども含めていう。つくよ」(デジタル大辞泉)。


【大意】

 月の光がなめくじの表面をぬらしていることである。


【附記】

 強いて言うなら「肌」が一句の生命かと思う。「月夜」は秋の季語であり、秋の句とも取りうるだろう。


 枕草子に「いみじうきたなきものなめくぢ」とある由。なめくじはなめくじら、なめくじり、なめくずなどとも言う由。漢名は蛞蝓かつゆ。むかしは、殻を持たないかたつむりがなめくじだと本気で思っていたものである。


【例句】

 五月雨さみだれに家ふり捨ててなめくぢり 凡兆ぼんちょう 

 あばら家の戸のかすがひよなめくぢり 同

 なめくぢり這ひて光るや古具足ぐそく 嵐雪らんせつ

 傘さして売家見るやなめくじり 正岡子規

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