つつじ咲く頃とはなりぬ春もはや

【読み】

 つつじさくころとはなりぬはるもはや


【季語】

 つつじ(春)


【大意】

 この春もいよいよつつじの咲くころになってしまった。


【附記】

 春の深みゆく感慨を言った。こんなのつつじや春の部分を替えればいくらでも句をつくれるではないか、との批判もあるだろう。思い出されるのは、芭蕉(1644-1694)の「行春ゆくはるを近江の人とママしみける」との句に対して、行春を行年、近江の人を丹波の人としても成立するではないかとの批判があったとのエピソードである。わたしも読み手の判断にゆだねたい。


 この句で使われている修辞(レトリック)は倒置法くらいのものだが、それは比喩等をさしおいて作句法の核をなすものとさえいまのわたしには思われる。


 なお、つつじの一種のさつきつつじ(さつき)はその名からも察せられるように夏の季語。


【例句】

 躑躅つつじ咲くうしろや闇き石燈籠 桃隣とうりん

 大文字だいもじ谿間たにまのつつじ燃んとす 蕪村

 近道へ出てうれし野の躑躅かな 同

 白雲の根を尋けり岩つつじ 召波しょうは

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