たれうゑし株とも見えず曼珠沙華

 たれうゑしかぶとも見えず曼珠沙華まんじゆしやげ


【季語】

 曼珠沙華(秋)


【語釈】

 曼珠沙華――彼岸花。


【大意】

 誰かが植えたとも見えない彼岸花の株だなあ。


【補説】

 彼岸花の神出鬼没なことを。日本の彼岸花は3倍体なので種子で増えることはない由。


 私はかつて句に「曼珠沙華」の語がはじめて見えるのは蕪村(1716-1783)の句と聞いたように思うのだが、それは事実と異なるように見える。


 万葉集中の歌に見える「いちしのはな」はえごのき、虎杖いたどり、草苺とする説などがあるものの、彼岸花とする説が有力視されているらしい。彼岸花を「いちじばな」と呼ぶ地方もある由。


 彼岸花には名前が多いが、俳句では「曼珠沙華」と詠むのがふつうのようである。


 ところで、私が今秋はじめて彼岸花を見たのは一昨日(9月16日)のことである。


【参考歌】

 道の壱師いちしの花のいちしろく人皆知りぬが恋妻は 作者不詳


【参考句】

 弁柄べんがらの毒々しさよ曼珠沙華 許六

 霧雨や下は雫の曼珠沙華 土芳とほう

 まんじゆさげ蘭に類ひて狐啼く 蕪村

 草刈のぎ倒しけり曼珠沙華 村上鬼城

 仏より痩せて哀れや曼珠沙華 夏目漱石

 曼珠沙華あつけらかんと道の端 同

 穢多寺ゑたでらの仏うつくし曼珠沙華 正岡子規

 狐啼け曼珠沙華光まんじゆしやげくわうおとろへぬ 北原白秋

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