潮浪轟寄すや春の河

 潮浪うしほなみ轟寄とゞろきよすやはるかは


〔季語〕

 春の河(春)


〔語釈〕

「潮浪」は海の波。某国語辞典にはその項目がなく造語かもしれない。

「轟寄すや」はとどろきながら押し寄せるなあ。感動・詠嘆の「や」を終助詞に接続するのは少々イレギュラーな語法のようにも見受ける。


〔大意〕

 海の波がとどろきながら押し寄せる春の河だなあ。


〔解説〕

 春になると海水が河川を逆流するというようなことが事実としてあるのか私は知らない。仮にそういうことがあったとしても、河川の勾配の急らしい日本ではかわいいものだろうかと思う。ただ私の記憶が確かなら、この国にも海水が中流域にまで上ってくる河川はある。そのようなダイナミズムは春にふさわしいように思った。


〔参考歌〕

 潮音のとよむを聞けばおぼつかな島べの春となりにけらしも 土田耕平つちだこうへい


〔参考句〕

 厳嶋よこれぬ足を春の浪 四睡

 春の海終日ひねもすのたりのたり哉 蕪村

 はるの海鶴のあゆみに動きけり 青蘿せいら

 岩の間にうづくまる春の潮かな 正岡子規

 ひたひたと春の潮打つ鳥居哉 河東碧梧桐

 塩釜のけぶりをおもへ春のうみ 芥川龍之介

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