薮入や頼みもせぬを人の親

 薮入やぶいりたのみもせぬをひとおや


〔季語〕

 薮入(新年)


〔語釈〕

「薮入」は、江戸時代、正月16日に奉公人が休みをもらい親元に帰ったこと。旧暦7月16日にもあり、そちらは特に「のちの薮入」と称した由。


〔大意〕

 頼みもしないことをするのが人の親というものらしいと思う薮入なのであった。


〔解説〕

「薮入」という語は今では死語かと思うが、年末年始や盆休みに親元に帰るということ自体はさほどめずらしくもないかと思う。そしてまたそのときに居心地の悪さを感じる向きも多いかと想像する。私は頼まないことをされるのを嫌うこともあって親と関わるのを面倒に思う。


「親思う心にまさる親心」ということわざがあるが、それは吉田松陰の辞世の歌から来ているらしい。私は当エピソード執筆時にそのことを知った。


〔参考歌〕

 親思ふ心にまさる親心けふの音づれ何ときくらん 松陰


〔参考句〕

 やぶ入の夢や小豆あづきの煮るうち 蕪村

 やぶ入りや浪花なにはを出て長柄川ながらがは 同

 薮入やなみだ先立人の親 一茶

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