煤掃けば身の下闇に積もる哉

 すゝけば下闇したやみもるかな


〔季語〕

 煤掃(冬)


〔語釈〕

「煤掃」は、煤払すすはらい。年末に家中の煤を払うこと。近世では12月13日を煤掃の日と定めたが、実際はそれ以後の都合の良い日にしていた由。

「身の下闇」は「下闇したやみ」にかけた蕪村(1716-1783)の造語。


〔大意〕

 煤を払うほどにその煤がわが身の下に広がる闇に積もることだなあ。


〔解説〕

 蕪村の造語を借りて舞台を年末に移した。早い話が、年々心に闇を抱えるようになって世俗の塵にまみれるようになったというような句意である。


〔参考句〕

 すゝはきは年くれ竹のはゝき哉 季吟

 旅寝してみしやうき世の煤はらひ 芭蕉

 煤掃は杉の木の間の嵐哉 同

 すゝ掃の埃かつぐや奈良の鹿 太祇

 月光西にわたれば花影東に歩むかな 蕪村

 花ちりて身の下やみやひの木笠 同

 西吹ばひがしにたまる落葉かな 同

 千年の煤もはらはず仏だち 正岡子規

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る