第7話 意外な展開

「なんだと!」


 愛弟子からの予想外の答えに胡弓は驚いた。


「もう私は魔音ではありません。貴方の弟子でもありませんので貴方の指示も受けません」


「そんなことが許されるとでも思っているのか!」


 元師匠の言葉に対し舞音は答えた。


「師匠を選ぶのも決めるのも私の自由であれば名前を捨てるのも離れるのも自由です」


「ぐっ……」


 胡弓は怒りのあまり何も言えなかった。


 まさか自分と恋仲にもなった従順な弟子がこんな事を言うとは夢にも思わなかったのだろう。


「さようなら胡弓さん。今までありがとうございました」


 舞音は部屋を飛び出した。


「待て!」


 早く逃げなければ捕まって暴力を受けられると思ったからだ。


 下駄も履かずに舞音は外に飛び出した。


「逃がすか!」


 胡弓もすかさず外に飛び出した。


 着物の舞音は袴の胡弓にすぐに追いつかれてしまい腕を捕まれた。


「さあ来るんだ!」


「嫌です! 私はもう貴方の指導を受けません!」


 胡弓が引っ張る力に負けぬよう舞音も必死になった。


「いいだろう! 叩いても蹴っても物足りない。体で教えてやる!」


 この言葉を聴いた舞音は暴力を振られた時よりも恐怖を感じた。


 この男から逃げなければ一生自分に暴力を振ってくる。


 そう感じた舞音はさらに必死にもがいた。


「いいかげんにしろ!」


「何してるの!」


 突然女性の声が聞こえた。


「えっ!?」


 声がした方を振り向くと幼稚園児くらいの女の子を連れた女性が立っていた。


「貴方! その子は誰なの!?」


「……お前には関係ない」


「関係ない? 夫が家に他の女連れていて『関係ない」はないでしょ!」


「……夫?」


 舞音は最初は聞き間違えかと思った。


 女性は胡弓の妻だった。

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