第6話 無視してもコレですよ(溜息)
『…それをすっかり忘れていたというのだから笑える』
『……』
「ちょっと。レイさん笑いすぎ。狐さんも静かに笑わないでよ」
笑いすぎでプルプル震える一人? と一匹を見て、私は不機嫌になりながらも溜息をつく。
『別に、いいんじゃないか?』
「なにが?」
『お前はお礼を言えた。』
「うん」
『そして、母の方も赦したんだろ?』
「うん」
『だから二人は笑顔でそこから出られたんだ。囲まれた直後に光で包まれてな……そして周りの怨念たちは逃げた。あいつらは成仏を望んではいないから。運がいいなー』
そうだったのかと思うと同時に、言い方が気に食わずに拗ねていると…ゴロンと寝返りを打ったレイさんがクスリと軽く笑った。
『まぁ、それが起きたのは…お前が一つには赦しを、もう一人には真っ直ぐなお礼…感謝を与えたからだがな』
その優しいレイさんの声色で呟かれた言葉を聞いてなにも言えなくなる。
「やめてくださいよ…私は善人なんかじゃ…」
『まだそんな事をいうのか?』
『…』
お狐さままで立ち上がっちゃったよ。え、なに。地雷踏んだ?
『私もそうだが…なにより白狐さまがお前の守護になっているのは…』
そこまで言って、レイさんはああ、もういい。と何かを諦めた。えー。そこまで言ったらなんか気ーにーなーるー
「それより、あの真っ黒い人型の奴らはなんだったんでしょうかね? よく聞く死神?」
『そんな大そうなモノじゃないな…憶測だが、お前が見た黒い人影は…死の気配を纏って、死の気配が強い人間の場所に現れて付きまとう報われない魂だろう。怨念が混ざってる事があるが…』
『……』
お狐さんまでコクコクと頷いてる。
『お前の場合、怨念がほとんどだったんだろうな…黒い影はな? 死期が近ければ近いほど、見えてくるんだ。見えないものもいるが。一見、元気そうでも…病気が末期だったり、マイナス思考ばっかだったりすれば引き寄せられてジッとそばに立つ』
「ナニソレ新たなストーカー? ううっサブイボが…」
『ようは、気持ちの持ちようだな! それでも見えたら祈れ。まだ死ぬ時期ではなかったら生き延びる。もし、もう死ぬのなら…あいつらのようにならないよう、祈るしかない』
「それって解決になってないような…」
『ああ。結局は本人次第だからなぁ…』
「じゃあ、死神…ではないんだ?」
『下っ端だと思えばいいのではないか? それに死神と言っても、一種の神だぞ? そんじょそこらに出没するワケがないだろう。それもたくさんいるなど、迷惑になるのではないか? 一人いれば十分だろう?』
「あ…そうか……たしかにそこまで暇じゃないもんね…それに神なんだから一人だけであっちいったりこっちいったりできそうだよね…」
また一つ、見解が変わったような気がするぞ……ふーむ…じつに勉強になる。
『これにこりたら、悪霊ホイホイは止めてくれると助かるのだが』
「…あのですね、私が好き好んでホイホイになっているとでも」
そこで私は考えた。静子ちゃんの死の原因は母親にあったけれど…
「ねぇレイさん、狐さん」
『ン? どうした』
『……?』
「あのね…私ちょっとやってみたいことが、あ…」
あるの。と言いそうになって
「やっぱいい。」
『おい、亜樹』
「面倒くさくなったからいい」
『……』
「そんな目で見ないで狐さん。面倒になったからいいんだ。さっさと寝るから! 明日は早いから」
『確か明日は…日曜で、亜樹はなにもないのではないか?』
「レイさん、うっさいです。」
拗ねたように言うと、彼はやれやれと言いながら立ち去ってくれた。狐さんもスッと消えた。誰もかれもいない部屋を眺める。
「…」
明日、実家へ帰ってお墓参りしよう。きっと静子ちゃんを思い出したのも…ずっとお墓参りしてないからかもしれない。
「だからって君らが出てきていいよとは言ってないぞ浮幽霊たちよ……」
目の前の悲惨な光景(泣)に私は若干頭痛がしたけれど、関わると余計面倒なので無視していないものとして、眠りました。
え? 大丈夫だったのかって?
ハハハ。大丈夫大丈夫。いたって問題なしですよ?
夜中の十二時に金縛りにあったり夜中の二時に目が覚めて重苦しくて目を開けたら変な頭から血を出した上半分しかないおばさんが上にのっかてただとか。
あるわけないじゃないッスか。
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