第3話 あっちもこっちも、からかわんといて!!

「と、いうわけですよ」

『は?』

「え?」

『いやいや…え? じゃない…続きは?』

「え? 聞きたいの?」

『いや、聞きたいも何も…っ』


 レイさんは深い、それは深い溜息をした。


『…あの純粋で無垢で素直で真っ直ぐだった子が、どうしてこうなったんだろうなぁ……』

「…ソレ、言います? おもにあんたがた…いや、レイさんとかじゃないけど…幽霊さん達のおかげでしょうよ」


 何の必要性があるのか知らんが、来る日も来る日も人を苦しめてくれちゃってからに。対応できる余裕ができたと、言っていただきたいね!!


『まぁ、亜樹のいう事は一理ある…私以上に苦しめられたみたいだからな』

「そうッスよもう~…だって、家族デショ? 保育園でしょ? そして幽霊たちからイビラレるってどんな苦行っすかソレ? まだ四、五歳だったのに!」

『…たしかに、性格が途中で歪んでいてもなんらおかしくはないか』


 真剣にそんなことをいうものなので私はカチンときた。


「ちょっと。真顔で失礼なこといわないでくださいよ。祓いますよ」

『出来るものならやってごらん?』

「すみませんでした調子に乗りました」


 土下座をする私の頭を、ナデナデするレイさん。ああ、やっぱりこの人は死人なんだなって思ってしまう。

 冷気とでもいえるのか、私には冷たい空気が頭を横切っているだけだと感じるだけ。


『冗談だよ』

「さいですか」


 レイさんはよっこらしょと、体制を崩してゴロリ床に転がった。


『さて…こんな話、私たち以外聞こうとする者はいないだろう。』


 チラリと横を見れば、ぐるりと猫のように体をくるまりながらも、興味津々の瞳で見てくるお狐さま。真っ白い毛並みが素敵ですぜ。

 ていうか、まだいたんだね。てっきりもう飽きて帰ってたのかと思ってた。


『続けてどうぞ?』


 優しい目だ。


 最近になって、レイさんが悪霊の類ではない事がわかって結構話し相手になってもらってる。え? どうしてわかるかって? 目と雰囲気とオーラを感じ取れば一目瞭然だったからデス。

 のほほんとしたオーラ、まったりとした温和な光を淡く体に纏って、そして決め手にとても優しい目をしてる。


 つまりは一緒にいて居心地がいい。癒される。一緒にいてくれるだけでマイナスエネルギーが消去されていくようだったからだ。


「わかりましたよ…続きを話します」


 そう言うと、パチパチ拍手してきた。よせやい。

 いやマジでヤメテ照れるからマジで。


「狐さんも便乗して拍手しないで?! ニタリ笑ってるよ絶対知っててやってるよぉおおおお!!」


 もう! なんで私の周りはこうもからかう奴らばっかなの?! 幽霊側でも社会のなかでも!!!

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