第2話 静子ちゃんって優しい笑顔するんだよ(知らねーよ)

 それからしばらくすると、本当に公園から出られた。私たちはまた、次の日その公園で遊ぼうと約束をした。


 来る日も来る日も、私はその子と遊んだ。ロクに友達がいなかったから…作り方が、分からなかったから…

 不思議な事にその子が守ってくれてたのか、一緒にいる時だけは幽霊からのちょっかいはなかった。


「あのね、友達の作り方はね、色々あるけど、話しかけられたら話してあげると、気の合う人なら友達になれるよ」


 ある日、友達ができない、作り方がわからないと言ったらその子は一生懸命こうしたらいい、ああしたらいいと教えてくれた。


「じゃあ、気が合わなかったら…?」

「しょうがないって割り切らなきゃダメ。気が合わない人と一緒にいたって、ロクなことがないから」

「ふーん…」


 数日が過ぎて、保育園で試してみた。案外簡単に友達ができてビックリしてしまった。同時に、なにか一つでも他と“違う”と迫害されるのは何故なのだろうと思った。

 彼女から幽霊とかが見えると何故他の皆に気持ち悪がられるかの理由を聞いた事がある。『他の人には見えないから』と返ってきた。

 ああ、そうだったのかと私は納得した。だから言っている意味が分からない。だから気味悪がれる。だって見えないし感じないのだから、どう接したらいいのか分からなくなるのだろう。


「手まり覚えた?」

「うん。この前できた友達に教えたら、“こんな古い遊びどこでおぼえたの?”って先生に聞かれちゃってね」

「…うん」

「“よくしてくれる一番の友達が教えてくれたんです!”って言ったの」


 ウキウキ話していた私とは打って変わって、彼女は伏し目がちに少し悲しそうな、でも嬉しそうな顔で笑っていた。


「そっか…じゃあ、亜樹ちゃんは…友達が……保育園でできたんだね…」

「う、うん…静子(せいこ)ちゃんのおかげだよ! ありがとう!」

「よかった。本当に…おめでとう」


 なんでそんな悲しそうに笑うかわからなくて、聞く勇気もなかったから、モヤモヤしながらだけど私はそのままその生活を続けていた。


 彼女が教えてくれた教訓は今も私の生活を支えてくれている。

 遊びもそうだが歌の楽しさも彼女から教わった。


 そんなある日、私は彼女とよく合う公園に、できた友達を連れて行った。いつも勝手に遊んでいるといつの間にか隣にいるので、今日はどんな子と友達になれたのか報告しようとワクワクしていた。


 でも、いつまで待っても彼女は現れてはくれなかった。


「ねぇ、あーちゃんの言う仲のいい友達ってまだ来てくれないの?」

「うん…調子悪くてこれなくなっちゃったのかなぁ…?」


 ワイワイと遊んでいても、ふと気が付くと公園の隅っこにウジャウジャと幽霊が沸いてくる。でもちょっかいを出す気配はなかった。

 静子ちゃんが言っていた、『怖がらずにいれば、ほとんどはよってこない』『一人でいなければ寄ってくることはまず、そうそうにない』ということが実証されて嬉しいはずなのだが…


(さみしい…なぁ)


 彼女と会えない日なんてなかったから。

 一緒に遊ばない日は…なかったから。


 あの暖かい笑顔に…癒されていたからなおの事だった。

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