第34話 唯一の白編① 甘い口づけはラブコメだけでいい
中間テストが終わって忙しかった勉強漬けの毎日から解放されて少しクールダウン。テストの結果はそこそこ良かったが、結局将来の目標は何も決まっていない。もうすぐ進路希望調査表も提出しなきゃいけないのに取り残されている気分だ……。
とりあえず、今は考えるのはよそう。テスト期間中は一切会えなかったから今日は久しぶりに茜とのデートだ。
とあるハンバーガー屋で向かい合わせで昼食をとりながら近況報告。俺は肉汁滴るビッグサイズのハンバーガーとウーロン茶、茜はチーズバーガーとポテトと大きめのコーラ。なんとなくカロリーは茜の方が多そうだけどそんなことを言ったらどんな反感を買うかわからないから黙っておく。まぁ変に遠慮して小食な女子よりもたくさん食べてる女子の方が一緒に食事してて楽しいのでそんな茜との昼食は俺にとって至福の時間だ。
茜の方も少し前に中間テストは終わっていた。詳しく点数を聞くような野暮なことはしてないけど、表情からするとそんなに問題はなさそうだ。少なくても赤点を取ってるわけではない。茜も中学時代はほとんど勉強なんてしてなかったと思うが、高校生になってからはしっかり勉強もして将来に向けて着実に歩んでいる。
テストの話になったから俺の方はそこそこ成績がよかったなんて話をしたけど、「ふーん、よかったね」という割とそっけない反応が返ってきた。でも言葉とは裏腹に顔や話し方から安心しているように感じる。だから進路がまだ決まっていないことは切り出しづらかった。
あまり詮索するようなことはしていないが、茜と
でも放っておく。女子同士で色々話したいこともあるだろうし、いくら俺が茜の彼氏だからって茜の友人関係にまで口出しするのは良くない。茜のプライベートにまで干渉はしない。でも「アキ」という茜の友達も東条のことを気に入ってたしなんだか複雑な気分だ……。
「智樹、コーラ飲みたくない?」
「ん?……うん」
正直コーラなんてどこの店で飲んでも味は変わらないし、そもそも俺はそんなにコーラが好きではない。でもこれは
とりあえず自分のウーロン茶を茜に差し出す。茜は小首を傾げながら(?)「あ、そうか」と小声で呟いた後、ウーロン茶を少しだけ
茜はウーロン茶を飲んだ後、今度は自分のコーラを飲みだした。え?俺とシェアするんじゃなかったのか?
そう思っていたら急に茜は立ち上がりテーブル越しに俺にキスしてきた。そして口に含んでいたコーラを俺の口に流し込んできた。
え!?何これ!?何で俺口移しされてんの!?
茜は自己表現が少ないタイプ。何度かキスはしたことあったけど全部俺からだったし、こんな人目につくような場所ではしたことない。……オイオイ何かの冗談か?
「………」
そして茜はそれっきりずっと黙っていた。顔を伏せているから表情はよくわからないが、すごく恥ずかしそうにしているのはわかる。わかったけど、なんか喋ってくれ!すっげー気まずい!
……わかったぞ。これドッキリかなんかだろ?どうせ茜は理央かアキの指示でこんなことやらされてるんだろ。あの2人のどちらかならやりかねない。多分この状況もどっかから見てんだろ?
まったく、ビビらせやがって……。ここでリアクションしたらあいつらの思う壺だ。とりあえず何食わぬ顔しながら飯に集中しよう……。
「このハンバーガーうまいな~。コーラともよく合うし。茜も遠慮せずにいっぱい食べろよ~!」
「………うん」
「「………」」
黙々と食事をしながら俺は辺りを見回す。俺達の様子を覗き見するような奴がいないか?理央の姿は一目で分かりそうだが、「アキ」を見たのは文化祭の時だけ、しかも学生服だったから外見の特徴をほとんど押えていない。それでも確認せずにはいられない。
辺りを見回したが、それらしい人物は見当たらない。……もしかしてドッキリだと思ったのは俺の勘違いで茜の意志で口移しをしたのか?だとしたら…嬉しいけど…やっぱり何をしゃべっていいかわからない…。
結局俺達は一言も話すことなく会計を済ませてハンバーガー屋を後にした。相変わらず気まずい空気が流れているけど、気持ちは少し冷静になった。そして冷静になってこれまでのことを考えると、
①口移しされる
②はぐらかす様に無理やり話す
③辺りをキョロキョロ見回す
④無言
完全にやらかした!!
②で動揺してない風を装っているのに③④が動揺してるようにしか見えない!カッコつけようとした結果、余計カッコ悪くなってしまった。せっかく茜が珍しく大胆なアプローチをしてきたのに台無しにしてしまった。男として情けない……。
「……ごめんね」
「えっ、……何が?」
「…急に変なことして。あんなことしてもびっくりするだけだよね」
「あ、謝ることじゃないぞ。確かに…びっくりはしたけど…嫌ではなかったし…」
「本当に?」
「本当だ!コーラの味は…よくわからなかったけど。……実を言うとさ……あれは理央か誰かに指示されてやったんじゃないか?って疑ってたんだけど…」
「ち…違うよ…」
「俺の方こそ…ごめん。ああいうことされた後ってどう反応していいかわからなくて…」
「そんなの気にしなくていいよ。もうこの話は終わりにしよう」
茜と恋人として付き合うようになってからもう半年以上が経っている。喧嘩してた頃も含めれば、出会ってからもう4年以上関係が続いている。それでも俺はまだ茜のことをちゃんと理解していないのかもしれない。奥手だと思っていた茜が急に積極的になるなんて想像できなかった。
でも、楽しみながら時には悩みながら試行錯誤を繰り返して関係を
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