第3話 同じ顔のやつに変なことする気は俺にはねーよ!
「はぁ〜楽しかった!」
「つ、疲れた……」
元気いっぱいな姉貴とは対照的にぐったりとしている女。
両手には大きな紙袋が一つずつ。
さっきまで、俺と同じ服装だったが、今は姉貴が私服としてよく着ているようなショートパンツにカジュアルシャツにスニーカーといった服装をしている。
今度は姉貴とそっくりになっちゃったなぁ。
「おう、お疲れ」
「ぐぬぬ……」
文句の一つも言いたいようだったが、俺が女に靴を貸し、運転してアウトレットモールに連れてきてもらった上に、俺が姉貴にお金を渡したところも見ていたので何も言えないようだ。
(あんたの姉さん、色々おかしいよ!)
おい、顔に出てるぞ。
だけど、姉貴が色々おかしいとは俺も思う。
- 2 -
あの後、みんなで姉貴がオフィスにする物件探しをすることになるとは思わなかった。
姉貴の体力と俺達の体力を一緒にするなよ。
「ここにしましょう!」
無事に決まったようで良かったけど、隣の女は不安そうだ。
「私、お仕事ちゃんとできるのかな……」
「俺もちゃんとフォローするから心配するなよ」
「うん……」
車の中で姉貴が言ったことを気にしているようだ。
― 回想 ―
「ねぇ、生きていくのにはお金が必要なんだけど、記憶喪失なら不安でしょ?」
「はい……」
「だから、私のところで働いてみない?」
「「え?」」
「省吾もいるから、大丈夫よ!」
「何が大丈夫なんだよ」
「これは今度から社長になるお姉ちゃん命令です」
「「え゛!?」」
「あと、住むところは省吾の部屋ね」
「マジかよ!?」
「私の部屋はダメなのよ……ごめんなさいね」
「どーせ、片付いてないだけなんだろ?」
少しの間。
「これもお姉ちゃん命令です」
「ズルいよ、それ!」
― 回想終わり ―
姉貴の言うことは間違ってるわけじゃないけど、いきなり働けと言われてもなぁ。
いくらなんでも、いきなり無茶なものは頼まないとは思うけど、不安にもなるよな。
「仕事も不安だけど……あんた、私に変なこと、しない?」
「しねーよ!」
同じ顔のやつに変なことする気は俺にはねーよ!
「おまたせ!」
「もう、いいのか?」
「明日から色々準備は必要だけどね」
「そうか」
「さぁ、美味しいものでも食べて帰ろっか!」
俺が車なのもあって、ファミレスに来た俺達。
今は、腹ごしらえも終えて、ドリンクバーの力も借りて食休み中だ。
「名前、どうしようか?」
「「名前?」」
「記憶喪失とはいえ、呼ぶ名がないのも不便でしょ?」
「まぁ……」
「智子→省吾→純佳?」
姉貴がメモ帳に俺たちの名前を書く。
「あー、いいんじゃないか?」
「じゃあ、純佳でいい?」
「はい!」
どうやら、あっさりとこいつの名前が決まったようだった。
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