第2話 買い物に行きましょう!
「省吾の妹なら私の妹でもあるんだから、変な嘘つかないの!」
すぐに姉貴に怒られてしまったが、だよなぁと思う。
逆の立場なら、俺もそう言うし。
でも、本当のこと言っても信じてくれるかどうか……。
女も、困ったような顔で俺の方をチラチラと見ている。
同じ顔をしたヤツが困ったような顔をしてるのはちょっと焦るな。
「仕方ないわねー、あんまりやりたくない方法だけど……」
姉貴は、困った俺たちの様子を見てそう言うと、隣りにある時計を何やらいじり出した。
「おい、何してるんだよ」
「ちょっと待ってなさい」
「人の物をいじってるのに待てもなにも……」
「これに仕掛けてたのよ、隠しカメラ」
「はぁ!?」
俺の誕生日に、「プレゼントにこれあげるわ」とやけに高そうな置き時計をドアの横に置いていったときのことを思い出した。
そういえば、たまに俺の部屋来るとメンテナンスとかで時計をいじってたな。
「このSDカードを私のパソコンで……」
「いつも思うけど、どこから出したよ、それ(ノートパソコン)」
「私の相棒だからね〜」
「まぁ、撮られてるなら、見たほうが早いだろうし、みんなで見てみようぜ」
俺も客観的にどうなったのか見てみたいしな。
女もおずおずとノートパソコンの画面を見に来た。
姉貴がため息をつく。
大して広くもない部屋にやけに響いた。
動画を見終わった姉貴が俺の方を見て不安そうに言った。
「私は夢でも見てるの?」
「俺もそう思ったよ」
「それなら、何かの手品?」
「そんな芸当、俺ができるとでも?」
「無理ね」
「だろ? でも、即答されると腹立つな」
動画には、さきほど起こった出来事がそのまま映っていた。
ひとつだけ違う点をあげるなら、鏡の破片が映っていなかったことだ。
「よし、省吾と妹」
「「え?」」
「買物、行きましょう!」
「「はい?」」
姉貴曰く、「女性は服とか色々入用だから、必要なものを買わなきゃね」とのことらしい。
それはわかるが、女の買物ってこんなに長いもんだっけ?
そもそも今日は、姉貴がオフィスにする物件を見に行くはずなんだけど、こんなことしてていいのか?
色々思うところはあるけど、来て早々、音を上げてアウトレットモールの休憩所に避難してきた俺には黙って待つことしかできなさそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます