第七話 流れの内と外
食堂で朝食を食べたおれは、北の塔に向かった。
イーが料理を作ってくれるのは
「どうした? そんな顔して」
返事がない。優しい風がふわふわとした髪を
「ああ、人見知りなのか」
「警戒させてしまいましたね。申し訳ありません」
「カンター。
紹介しても何も言わないぞ。どうした、
「化かし合いは苦手なので、
カンターも、何を言っているんだ? 深く考える前に、イーが口を動かす。
「
「分かっていますよ。
「例の
瞬間移動のことは
「資料をよく読んでおくようにと、言っておいたのですが」
「ああ、うん」
「やっと分かった?」
「私の弟子は頭が固いのですよ。私に似て、ね」
「普通、犯人はもっと歳が上だと思うだろ?」
「否定してないし、最初から認めていたわよ」
「仲がいいのですね」
カンターは微笑んでいた。
「イーは、二人で事件を解決してきた
「もう。自分で解決したことは、ほとんどないじゃない」
「二人には幸せになってほしいのですよ。私は」
言葉の意味が分からない。カンターが話を続ける。
「
「……」
「外界の雑音を、
おれも思ったことだ。でも、たぶん違う。
「
「利害が一致していると言いたいのね」
「すぐに、とは言いません。ゆっくり考えてください」
カンターは去っていき、地上で塔の扉が開いて閉じた。
イーが目星をつけていた三人のうち一人が、カンターだった。
城下町は、
持たざる者は、
「だからって、
「
イーが不思議そうな顔で見つめていた。
「何言ってるんだ? さっさと出てこいよ。それとも、このままどこかに逃げるか?」
「逃げる気があるなら、とっくの昔に行動しているでしょ」
「それもそうだな」
結界の外に瞬間移動したイーとともに、おれはいつもの椅子に腰かけた。
「
「さらりとすごいこと言うな」
「この程度の
「どうだったかな。意味なさそうなのは最近分かった」
そうだ。
「いずれ起こる未来の危機を回避するため」
「先のことが分かるから、自分から捕まったってことか?」
「
なるほど。おれには
「それで、どうする?」
「どうとでもできるけど、どうしたいの?」
「おれに聞かれても」
「その返事も読めなかったわ」
白い服の相棒は嬉しそうだ。おれは決めた。
「つまり、流れを変えればいいんだろ。任せろ」
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