第六話 憂いを断つ剣
城の中庭程度の広さなら
「そろそろ
「練習中は
「
おれの放った矢は的の中心に当たる。
道具を長く使えるようにと、
「ふん。まだ
「ありがとうございました」
エンネン警備長は
おれは中年になる前に、弓の名手になりたいものだ。
「
「そうだけど、努力は必要だろ」
いつものように雑談するイーとおれ。
北の塔に強い風は吹きこまないため、寒くはない。
「
右隣に座る少女は、困ったような顔をしていた。白い服が揺れる。
いつの頃からか座る場所が決まっている。
「最近は
「先、ね。黒幕を捕まえたいと思う?」
「
二人とも例の共犯者につける名前が思いつかず、単に黒幕と呼んでいた。
「怪しいのは三人で、関わっているのは一人か二人」
「
「そうね。この話はまた今度にしましょう」
気のせいか、イーの横顔がすこし悲しそうに見えた。
次の日、早朝の中庭で三人の姿を見た。
カンターとエンネン。それにコフテリアスだ。三人? まさかな。
カンターは
コフテリアスは大臣で、
おれは活躍を聞いたことがない。
この中で
「我に敵意を向けるか、少年」
隠れていたのに気付かれた。さすがは
「邪魔すると悪いと思って。それに、おれはもう子供じゃないですよ」
姿を現したおれに対して三人は何もしない。
「そうか。我々が歳を取っただけだったな」
「一緒にしないでいただきたい。
「そうですね。私たちに比べたら」
「いつも見回りありがとう。おかげで平和だよ」
「では、いってきます」
おれはいつものように城下町に向けて歩いていった。
腹減ったな。そろそろ城に戻るか。
見回りも終わり、公園を通り過ぎようとしたおれは、悲鳴を聞いた。
「大声出してんじゃねぇぞ。オラァ」
「命ばかりはお助けを。サクセト様」
二十歳くらいの男が、同じくらいの歳の男に暴力を振るっていた。
おれが腰の棒に手を伸ばす前に、誰かが割って入る。
「暴力はいけませんね」
「そんな
不良が
普通の人より
「カンター!」
叫ぶと同時に、男の左手から
「やるじゃないか」
年配の男性とは思えない動きで回避したカンターは、
「痛みが理解できましたか?」
「い、命だけは……」
「あなたはここで死んだ。そう思えば、残りの人生は他人に優しくできるでしょう?」
「あ、あああ……」
ようやく血が出ていないことに気付いた不良、サクセトは涙を流した。
子供の頃からそうだ。いつからかな、どうでもいい雑談をしなくなったのは。
それにしても、おれに内緒で見回りをしていたなんて。
微笑みながら腰の
「
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