第五話 持つ者と持たざる者
「今日も暑いな」
「……」
塔の上部。天井付きの庭園。白い服の少女は返事をしなかった。
すこし眉を下げている。無表情よりはマシか。
「なんだ? 悩みがあるなら話してみろ」
「わたくしと違って、おモテの
「
イーは
そっぽを向いてしまった。なにがなにやら。
「それでさ、
「ふーん」
「出没場所を記した地図、見るか?」
取り出した地図を見ずに、おれの目を見つめるイー。
「あなたは関わらないほうがいいと思うわ」
イーは珍しく
「おれの手に負えない相手ってことか?」
「比較的高い
「つまり?」
「
「犯人はおれだったのか」
「違うでしょう」
珍しく、イーが
やったぜ。いや、やったのはおれじゃない。
「あなたと一緒に育った人たちは?」
「
どこで何をやっているのか。
「ヴァトカインの闇ね」
「事件に関係が?」
「ないわ」
「あいつらの仕業じゃないならいいか」
犯人が動く夜まで待ちだな。
北の塔は今日も平和で、眠くなる。弓の練習しないと。
ああ、横になると石の床が気持ちいい。
まぶたがとじる。
目を開けると、少女の顔が近くにあった。
磔にされたおれは何かの
「石の上で寝ると風邪ひくわよ」
「起こしてくれたのか。悪いな」
「
イーの言うとおり、全身に疲労感が。気合い入れてやりすぎ。
「疲れたというより痛い」
解放されたおれは、塔の西側の椅子に座る。隣に少女が座った。
「ね。運動しなくても
「そうだな。今日は
「寂しかった?」
「ああ。筋肉見せてみろ」
「嫌よ」
サボってるんじゃないか? 笑顔が見られたから、よしとするか。
夜も
イーの合図を待つおれは、町を見渡せる公園にいた。ほかに人はいない。
突然、南東に
「のろし? 合図ってこれか」
あいつに隠し事はできないな。
と思ったが、隠していることも、
「じゃあ、別にいいか」
民家。玄関は開いている。
光の網で
「強い
「あたしは、普通」
ピスチャは
「つまりここは彼氏の家だったのか」
「本当に、変な人。早く捕まえて」
おれが状況を理解するためには、住人の説明が必要だった。
「
「ビオレチで
白い服の少女は
東にある、海のように大きな湖の先にある町、ビオレチ。
湖に
おれは塔の端で、柱に背をつけて眉をしかめる。
「なんか、嫌な感じがするぜ」
「まだ証拠はないけど、そのうちなんとかするわ」
イーにしっぽを
この手で
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