第二話 初めての事件
「立ち話もあれだし、座って話そうぜ」
おれは、
塔と一体化している石の椅子。どうやって削ったのか、おれには分からない。
高い場所なのに強い風が吹き込まない理由も分からない。
おれは先に歩き、階段から離れた西側に座った。
「
おれの右側に座ったイーが聞いた。
さっきまでの無表情が
生まれつき
鍛えた
「気分は普通だけど、不便だな」
おれは、塔の入り口で
生まれたときから
ついでに、たぶん十代後半だということも話した。
「同じね、両親がいないのは。歳も近いはずよ」
「細すぎるぞ!
抱き着かれたとき、十代半ばよりも若いと思った。
おれが感触を思い出している最中、少女はすこし困ったような顔で目を
「筋肉を、
「
おれは力説していた。
「もう、分かったから。
いや、そんなことよりも。
「名前呼んでくれたか。ちょっと照れるけど、いい」
「呼んでないし、あなただって……」
イーは複雑な表情をしている。おれは塔に来た理由をすっかり忘れていた。
「カンターとまともに勝負ができるのはおれぐらいだ」
カンターは剣の
相手に
「
確かに。よく分からないからって逃げていたのか。
隣に座っている少女はこんなにも普通に見ていられるっていうのに。
それにしても頭に違和感が。
「
頭を触りながら、つぶやいてしまった。話と関係がないことを。
「調理に使う
「そうそれ。おれにはまだ早いけど、対策は必要だろ」
「そんな効果はないわよ」
「え?」
「いいじゃない。髪がなくたって」
「よくないだろ!」
おれは激怒した。
怒ったおれを見て、イーはなぜか表情を緩めた。
どうやったら笑ってもらえるのか、まだつかめない。
「そうだ。
「調理室の
「
「
「てことは?」
いや待てよ。塔の上から調理室の様子が分かるのか、イーは。
「それなりの
「白髪と、ツルツル頭と、ウィッグ疑惑」
「分かったけど言っていいの?」
「その前に、なんで分かるのか教えてくれよ」
得意気に笑ってくれるのかと思ったら、違った。
少女は無表情で目は暗く沈んでいる。
笑ってほしかっただけなのに、おれは選択を間違えたらしい。
「
「ここから見える範囲が?」
東に大きな湖が見えた。あの先の平原には大きな町があるらしい。
「この
「ワクセイって
イーがすこし眉を下げて、すぐに話を続ける。
「この世界って言えばいいかしら?」
「おい! 大丈夫か? どこか痛くないか?」
おれは少女の肩を
世界全部の
完全に
「痛いわ。肩が」
白い服の少女は、
「悪い。でも、大丈夫なわけないだろ」
手を離したおれに向かって、イーが微笑した。
理由は分からないが、おれも笑顔を返した。
北の塔から出たおれは、犯人を捕まえることにした。
イーを誘ったが、断られた。
日が
城の中庭で
生徒たちが解放される。チャンスだ。
「オラバ先生、お疲れさまです」
間髪入れずに霧吹きを向けて中身を散布。女性用の
イーの話では、すぐに反応が起こるらしい。そのとおりになった。
杖を持った年配男性の頭が光り出した。
「それは、香水? まさか、ワシの頭が!」
さすがは
ウィッグを外したオラバは、罪を認めることとなる。
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