6 金神除祈願
白い布をかけ、小さな仏像や
それから、
「
狭い部屋に満ちるセクシーな美声の響きに、先輩の後ろに並んで座る二人が、圧倒されつつも引き込まれていくのを、僕は傍らから眺めやる。
しかし、こんな大声でお経上げたりして大丈夫なのか。
ウルサイとか、クレーム来るんじゃ。
まあ、夏休み前の平日の昼間だし、みんな留守かもしれないけど。
そういえば、ここの住民で、最近亡くなった人もいるんだっけ。
別の場所で亡くなったからか、特に何も感じなかったな。
そんなことを取り留めもなく考えるうち、別のお経が始まった。
「
経文を唱えながら、先輩は短い棒の先に金属の輪がたくさん付いた法具を手に取り、シャラシャラと音を鳴らす。
あれは、お地蔵さんやお坊さんなんかが持ってる
続けて、
あの格好と立ち込めるお香と、
「…………
般若心経が余韻を残して終わると、次はいよいよ金神の祟りを無にする
先輩は、より一層声を張り上げる。
「
さらに、
「
最後の呪文まで、淀みなく唱え終えた先輩は、やや疲れた様子で、二人へ向き直った。
「これで、金神の祟りは無化されました。もう、大丈夫。何の心配もありませんから、ご安心下さい」
しつこいくらい何度も、大丈夫だと繰り返す。
「もし何か、奇妙な音がしたとしたら、それは神仏の加護が働いている証です。悪いモノをやっつけているのです。よろしいですね?」
「はい。本当にありがとうございました」
夢から醒めたように我に返った彼女は、先輩へ丁寧に礼をする。
ヤツも心なしか目を潤ませ、彼女とともに頭を下げた。
「よかったな、シオ。これで安心して眠れる」
「うん。ありがと」
慰め合う二人を一瞥して立ち上がった先輩が、そのまま部屋から出て行くのを見て、僕も慌てて後を追う。
「ちょっと、どこ行くんですか?」
「隣の様子見や。オマエはここ片しとき。それと、彼女に聞いといてんか。金神の噂、誰から聞いたんか、詳しく」
先輩が行ってしまい、カップルの元に取り残された僕は、一人黙々と片付けを始める。
「手伝います」と、ヤツより先にいってくれた心優しい彼女に、頼まれたことを尋ねると、彼女はあっさり答えをくれた。
「それなら、サナちゃんからよ」
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